ISSが地球のまわりを周回する理由
地上から約400km上空には、サッカーコートほど巨大な有人施設「国際宇宙ステーション(ISS)」が存在しています。
ここには複数の宇宙飛行士が滞在しており、NASA(アメリカ)、ロスコスモス(ロシア)、JAXA(日本)、ESA(ヨーロッパ)、CSA(カナダ)の宇宙機関が協力して運営しています。
ISS内は重力がほとんどない「微小重力」環境です。
地上にはない貴重な実験施設であるため、ここでしかできない1700件以上の実験が行われてきました。
例えば、微小重力環境での「生物の成長」や「人体への影響」などが調査されています。
またISSから地球や宇宙の観測を行ってデータを蓄積しています。
しかし、この特別な施設はどのように地上400kmに「浮かび続けて」いるのでしょうか?
地上から離れれば離れるほど地球の重力は弱まっていくとはいえ、ISSがただ上空に浮かんでいるだけでは、徐々に地球重力に引っ張られて落下してしまいます。
そこでISSは「高速で地球を周回」することで、この問題に対処しています。
大まかなメカニズムは、「ニュートンの大砲」と呼ばれる思考実験で説明できます。
上の画像のように、非常に高い山から大砲が砲弾Aを発射すると、砲弾は重力により徐々に地球に向かって落ちていきます。
これをもっと速い砲弾Bにすると、落下位置が少し遠くなります。
では砲弾の速度をさらに大きくするとどうなるでしょうか?
砲弾Cのような軌道をたどるようになります。
砲弾Cは確かに重力の影響を受けて地球に向かって落ちているのですが、地球が丸いため、いつまでも地上に到達しないのです。
これはいわば永久に落下し続けているような状態です。
そしてこの動きを成立させるには、空気抵抗がない環境で、十分な速度を出す必要があります。
それを満たしたものが、「地上400kmを高速周回するISS」というわけです。
ISSを含むほとんどの人工衛星は、打ち上げ時のロケットによって適切な速度まで加速。
地上400kmでは空気抵抗がないため、その後は、主な推進力がなくても最初の速度を維持しつつ前進してくれます。
ちなみに、前進速度が小さいと砲弾AやBのように地上に落下し、前進速度が大きすぎると砲弾Dのように地球から遠く離れていってしまいます。
そのためISSが地上400kmにとどまるための適切な速度は、約2万7700km/hになります。
ISSはこの速度により、地球を約90分で1周、1日で約16周しているのです。
では、地上からISSはどのように見えるのでしょうか?