キャップを被って念じるだけで方向転換する車椅子
「思念で動かすロボットハンド」「念じるだけで文字入力できるマインドライティング」など、思念でコントロールする技術は、さまざまな分野で研究されています。
そしてこれらの技術は、特に重度の身体障がい者と相性が良いと言えます。
身体を動かすことができなくても、思念だけで支援機器を扱えるようになるからです。
今回ミラン氏ら研究チームは、思念でコントロールできる電動車椅子を開発しました。
ユーザーは専用キャップを被るだけで脳波が読み取られ、車椅子の方向を操作できます。
具体的には、頭の中で「両手を上げよう」と考えると車椅子は左折し、「両足を動かそう」と考えると右折するようになっています。
実用的なレベルまで習得するにはいくらかトレーニングが必要ですが、電極を脳に刺す必要もないため、身障者たちも安心して取り組めます。
そして実験には、3人の四肢麻痺患者(それぞれ参加者①、参加者②、参加者③とする)が参加。
彼らはそれぞれ週3回のトレーニングを2~5カ月間受けました。
最初のトレーニングでは、3人とも43~55%の精度(自分の考えと車椅子の動きが一致した割合)を示しました。
しかしトレーニングにより、参加者①は95%にまで精度を高めることができました。
また参加者③は、トレーニングの途中から別のアルゴリズムに変更することで、精度が98%にまで向上。
ところが参加者②は、他の2人ほど高いパフォーマンスを発揮しませんでした。
最初のセッションで精度がわずかに上昇しただけで、その後は大きな変化が見られなかったのです。
では参加者によって結果に大きな違いが出たのはなぜでしょうか?