上手な思念コントロールの秘訣は「脳波を変化させる」ことだった
研究チームが参加者の脳波を測定したところ、精度が向上した2人は脳波を変化させていたと判明しました。
ミラン氏によると参加者①③は、「脳のさまざまな部分を調整して、『左に行く』パターンと『右に行く』パターンを生成するスキルを身に着けた」というのです。
対照的に参加者②は、トレーニングによって脳活動のパターンが大きく変化することはありませんでした。
彼の脳波は、トレーニングの最初でいくらか変化したものの、その後はずっと安定したままだったのです。
この脳波の違いは、実際の操作にも大きな影響を与えました。
トレーニング最後に行われた「散らかった病室を車椅子で移動する」テストでも、クリアできたのは、脳波が変化していた参加者①③だけだったのです。
ミラン氏は、「複雑な日常動作を可能にするブレイン・マシン・インタフェースの制御を習得するためには、大脳皮質における神経可塑性(学習や経験で脳細胞のシナプス結合が変わること)の再組織化が必要なのかもしれない」と述べています。
身障者が松葉杖で上手に歩くためには、単に松葉杖の機能を高めるだけでなく、ユーザー自身が「松葉杖を使った歩き方」を学習し、脳や神経、筋肉を適応させる必要があります。
同じように、思念でコントロールする支援機器においても、支援機器のアルゴリズムを向上させるだけでなく、ユーザー自身の学習と適応が重要だと判明したのです。
この新しい理解は、今後多くの人が思念コントロールを獲得するためのカギとなるでしょう。
そして研究チームは、次の段階として、参加者②で脳波の変化が得られなかった理由を解明したいと考えています。