忘れられない「声」は存在するのか?

私たちは日常生活の中で、常に多くの声に晒されています。
しかし、なぜか特定の人の声だけが心に強く残ったり、何年経ってもふと蘇ったりすることはないでしょうか?
それは声の高さや話し方の特徴によるのか、それとも単にそのときの印象や感情、話の内容によるものなのか、研究者たちは疑問に思ってきました。
これまで、記憶に残りやすいものといえば、顔や風景、物体などの“視覚的な刺激”が中心に研究されてきました。
たとえば、顔の記憶に関する研究では、特定の顔は他よりも一貫して覚えられやすいことが示されています。
一方で、聴覚的な刺激、特に「声」に関しては、これまで体系的な調査はほとんど行われていません。
音は移ろいやすく、内容や状況に左右されやすいと考えられていたため、声そのものに普遍的な記憶特性があるかどうかは不明だったのです。
研究チームはこの点に着目しました。
彼らは聞き手の個人的な経験や感情を超えて、声そのものに「覚えやすさ」の違いが存在するのではないか、という仮説を立てたのです。