退屈を感じるとき、脳では何が起こっているのか?
私たちは一般に「退屈=悪いもの」と思いがちです。
確かに退屈している間は注意力が続かず、何も面白く感じられませんし、集中力は落ちて、時間の流れが遅く感じられます。
けれど実は、退屈はただ何もしていない状態ではなく、脳が特定のネットワークを切り替えている状態であることが近年の脳科学研究で示されています。
たとえば、映画を見ているとき。
最初は興味津々でスクリーンに集中しており、このときは「注意ネットワーク」が活性化しています。
このネットワークは、重要な刺激を優先し、不要な情報を排除する役割を果たすものです。

しかし内容が期待外れだったり、展開が鈍かったりすると、だんだんと注意力が途切れ、脳は「デフォルトモードネットワーク(内省ネットワーク)」へと切り替わっていきます。
このデフォルトモードネットワークは、自分の内面に目を向け、過去の記憶を整理したり、未来の出来事を想像したりする役割を持っています。
いわば、私たちが「ぼーっとしている」ときに裏で稼働しているシステムなのです。
また「島皮質」という脳領域は、体内の感覚信号――たとえば「退屈だ」という感情――をキャッチして処理しており、「扁桃体」はそうした感情に関連する記憶を処理し、ネガティブな気分から逃れようとする動機づけを起こします。
こうした一連の反応は、決して無意味な「空白時間」ではありません。
むしろ、脳が休息と再調整を行っている大切な時間なのです。