カールおじさんのような地上絵を発見!
ナスカの地上絵は、今や世界中の誰もが知っている世界遺産です。
最初に発見されたのは1926年、アメリカの文化人類学者アルフレッド・クローバーとペルーの考古学者メヒア・ヘスペが見つけた直線状のものでした。
それ以来、有名なコンドルやサルを筆頭に、多様な動植物や幾何学模様の地上絵が見つかり始めました。
地上絵の大きさは約10〜300メートルとさまざまで、そのほとんどが紀元前2〜紀元後7世紀の間にナスカ文化の人々によって描かれたとされています。
1994年に世界遺産に登録されたときには約30点ほどの地上絵が見つかっていましたが、それは氷山の一角に過ぎませんでした。
というのも、地上絵の散見されるナスカ台地があまりに広大なため、どこにどれだけの絵が分布しているか見当がつかなかったのです。
(ナスカ台地の広さは東京23区の半分に達するという)
そこで山形大学は2004年から現地調査を進め、2012年にはナスカ市に「山形大学ナスカ研究所」を設立。2015年にはペルー文化省との間で地上絵の学術調査と保護活動に関する協定を結びました。
以来、同チームは2018年までに190点に及ぶ地上絵を発見しています。
その後、チームはペルーの考古学者と協力し、2019年6月~2020年2月にかけてナスカ台地とナスカ市街地の周辺を調査。
そしてドローンを使った現地調査や航空レーザー測量で得られた高解像度画像の分析の結果、新たに168点の地上絵が発見されたのです。
2018年までに見つけた190点を加えると、同チームは合計で358点もの地上絵を見つけたことになります。
今回発見されたのは、人間の全身像や鳥、シャチ、ヘビ、ネコ科動物、ラクダの群れなどです。
大きさは全長10〜50メートルほどで、制作年代は紀元前100年〜紀元後300年の間と考えられています。
このうち36点はナスカ市街地の近くにあるアハ地区で見つかり、チームは同じ地区ですでに41点の地上絵を発見しています。
これらを保護するため、2017年にはペルー文化省と共同でアハ地区に遺跡公園が設立されました。
こちらが新たに見つかった人間の地上絵で、カールのおじさんのような口周りが特徴的です。
チームは現在、AI(人工知能)を用いた地上絵の分布調査を進めており、それらの位置傾向を正確に把握することで、地上絵の分布ルールを明らかにしたいと考えています。
そうすれば、より多くの地上絵がスムーズに見つかるようになり、迅速な学術調査と保護活動が進められるでしょう。
一方で、当時の人々がナスカの地上絵を描いた目的はまだ完全には解明されていません。
今のところ、農耕や水に関わる儀式に使われていたという説が有力ですが、今後のさらなる地上絵の発見と分布規則の理解から、その意図の解明も期待されています。