視覚的なマンデラ効果は「常識による記憶補填」で生まれる
研究チームは、視覚的なマンデラ効果が本当に存在するのかどうかを確かめるため、合計40セットのアイコンを用意し、参加者にどれが正しいアイコンか判断してもらいました。
それらのアイコンは3種類(1つは正しい画像、残り2つは偽りの画像)で1セットです。
例えば、スター・ウォーズのキャラクター「C-3PO」やポケモンの「ピカチュウ」、ボードゲーム「モノポリー」のキャラクター、フォルクスワーゲンのロゴなどが提示されました。
テストの結果、特定の7セットのアイコンにおいては正解率が33%以下でした。
たとえば世界的なキャラクターである「ピカチュウ」の尻尾は上の図ではどれが正解でしょうか?
今回報告された研究によると多くの人は「黄色の尻尾で先端が黒色になっている」ものを解答したそうです。
しかしこれは「誤りのイメージ」で、下の画像の一番左が正しいピカチュウです。
つまりこれらのアイコンでは、人々が画像を間違って記憶している可能性が高かったのです。
しかも参加者は、7セットのアイコンに対して、2種類の偽画像からランダムに選ぶのではなく、常に特定の1つの偽画像を「本物」だと錯覚していました。
さらに彼らは、自分が間違っていることを全く疑わなかったようです。
この結果から、「マンデラ効果」が確かに現象として存在していることが分かります。
そして視覚的なマンデラ効果が特定のアイコンにだけ生じたように、「マンデラ効果が生じやすい何らかの法則がある」とも考えられます。
では、特定のアイコンが誤って共有される原因は何でしょうか?
原因はさまざまですが、視覚的な要因の1つには、「事前知識による補填」が関係しているようです。
例えば研究チームは、マンデラ効果を引き起こす「C-3PO」の画像において、人々はメディアに描かれているC-3POの上半身しか見ていないことに気づきました。
私たちはC-3POの上半身だけに注目し、記憶しているのです。
そのため全身画像を選択しなければいけないケースでは、「体は通常1色だけで構成される」という一般的な事前知識(常識)を用いて、空白の下半身を埋めるのです。
ピカチュウにおいても尻尾は黄色ですが、多くの人が先端は黒と勘違いしていました。
これも目に付きやすい耳の着色模様から尻尾の模様も同様のはずと勘違いしている人が多かった可能性があります。
現代ではネットによる情報共有があるのだから、間違った情報は容易に修正されていいはずだと考えられます。
それでも多くの人たちが誤った記憶違いを共有してしまっているのは興味深い事実です。
不鮮明な記憶を推測で補う脳のメカニズムは以前から確認されています。
マンデラ効果とは、「常識を部分的に外しているアイコン」を脳が処理するときに発生するものなのかもしれませんね。
もちろん、この傾向は視覚的なマンデラ効果にのみ当てはまります。
他のさまざまなマンデラ効果の原因は、今後の研究で解明していく必要があるでしょう。
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