丸みをおびた「ナノサイズのオブジェクト」作成に成功
フー氏ら研究チームは、「DNAxiS」というソフトウェアを開発。
DNAxiSは一種の設計支援ツールでありDNAを使った立体的な構造物を作成する手助けをしてくれます。
今回の研究では利用して、既存の角ばったものより複雑な、丸みをおびたDNAのオブジェクトを作成しました。
その作成方法は細長い粘度を使った土器作りにも似ており、まずは長いDNAの二重螺旋をリング状にします。
そして大きさが異なるリングをいくつも重ねていくことで、「中が空洞で、なめらかな曲線を有するオブジェクト」が成形されます。
特定の部位を、リングの層を増やして補強することも可能です。
とはいえ、この状態ではそれぞれのリングがバラバラで連結されていません。
そこで「短いDNA鎖」でホチキス止めする必要があります。
ただしフー氏が述べるように、「ホチキス止めの数が少なすぎたり、位置が悪かったりすると、オブジェクトは正しく成形されません」
表面が丸みをおびているので、ホチキスの適切な位置を発見するのが非常に難しいのです。
そこで役立つのが、ソフトウェア「DNAxiS」です。
作成したいオブジェクトの形状を入力すると、コンピュータがDNA鎖の正しい配置を提案してくれるのです。
研究チームは、この新しい方法によって円錐、壺、空洞の球体、キノコ、四葉のクローバーなど、丸みをおびたさまざまな形状のオブジェクトを作成することに成功しました。
しかもそれぞれのオブジェクトのサイズは10~50nmです。
一般的なものさしの最小メモリは1mmですが、そのわずかな隙間に花瓶型やキノコ型の容器が数万個収まるのです。
このような極小オブジェクトは、さまざまな可能性を秘めています。
例えばこの技術を利用して、薬を運ぶための小さな容器を作れるかもしれません。
また、太陽電池や医療用画像処理のための「特定の形状をした金属ナノ粒子」を鋳造する鋳型を作れる可能性もあります。
研究チームは、「今回の技術が実用化されるのは何年も先だろう」と述べています。
それでも、ものづくりの新しい扉が開かれたのは事実であり、今後の進展を楽しみにできます。