「親切な行為」は従来の治療を上回る効果が期待できる
延べ10週間の調査の結果、3つのグループすべてにおいて、参加者の生活満足度が向上し、うつ病と不安症状、ストレスレベルが軽減していることが分かりました。
その一方で、親切な行為をしたグループは、2つのCBTグループに対して、治療の効果がより長く持続し、10週後にも依然として優位な効果を示していたのです。
さらにこのグループは「認知再構成(否定的な思考パターンを修正する)」に比べて、生活満足度やうつ病の改善レベルが高くなる結果が出ました。
加えて、「行動活性化(社会活動に参加する)」に対しては、他者とのつながりをより強く感じられることが示されました。
これについて、研究主任のジェニファー・チーヴンス(Jennifer Cheavens)氏は「単純に社会活動に参加するだけでは、他者とのつながりを改善するには不十分であり、親切な行為を直接行うことで初めて、より強いつながりを感じられることがわかった」と述べています。
また、この行為がうつ病を改善する理由について、同チームのデビッド・クレッグ(David Cregg)氏は「親切な行為をする間、患者がうつや不安の暗澹とした気持ちから解放され、自分自身を癒すことにつながるからだ」と指摘しました。
これは、うつ病患者に対して多くの人が抱いている考えが誤っている可能性を示唆しています。
チーヴンス氏は、こう説明します。
「私たちはしばしば、うつ病や不安症を抱える人は自分のことで精一杯だから、他人を助ける余裕などなく、またそれにより余計な負担をかけたくないと考えがちです。
しかし今回の結果はそれに反しています。
人に親切にするという単純な行いは、うつ病や不安症を癒す上で、従来の治療法以上の効果を発揮する可能性があるのです」