3つの治療法でそれぞれの効果を実験!
今回の研究では、アメリカ北東部オハイオ州に住む、中程度から重度のうつ病、不安症、強いストレス症状を持つ122人に協力してもらいました。
参加者は3つのグループに分けられ、それぞれ異なる方法の治療を受けてもらいます。
まず2つのグループには、うつ病の一般的な治療法として知られる「認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy:CBT)」が割り当てられました。
CBTとは、不安やストレスなどで固まり狭くなった考えや行動を患者自身の力で柔らかくし、自由に考え行動できるように促す心理療法です。
CBTでは「認知・感情・身体・行動」の4つの側面に注目し、その中でも自分の力で変えやすい「認知」と「行動」にアプローチします。
感情と身体はたとえば、「不安になる、悲しくなる」とか「心拍が上がる、お腹が痛くなる」など、意思とは無関係な反応なので、自分ではどうしようもできません。
反対に、自分の考え方を示す「認知」と振る舞いを示す「行動」は変えられます。
具体的にいうと、認知面へのアプローチとしては、ネガティブな思考パターンを見直して、考えの幅を広げ、抑うつや不安を軽減し気分を楽にする「認知再構成」という方法。
行動面へのアプローチとしては、生活リズムを変えたり、喜びや達成感のある行動や社会活動を増やす「行動活性化」の方法が用いられます。
今回の研究でも、一方のグループには1週間に少なくとも2日の「認知再構成」の治療を割り当て、もう一方のグループには1週間に2日の「行動活性化」を割り当て、社会活動に参加してもらいました。
(ここで社会活動とは、人と会って話したり、友人と連絡を取るだけでいい)
そして3つ目のグループには、1週間のうち2日間、1日に3回の親切な行為をするよう指示しました。
ここで親切な行為とは「他者を喜ばせたり、他者の利益になる大小の行動を指し、自らの時間や資源の面で何らかの犠牲を払って行うもの」と定義されています。
具体的には、友人のためにクッキーを焼いたり、知人を車で送り迎えしたり、ルームメイトに励ましの言葉を書いた付箋を残すなどが行われたそうです。
どのグループの参加者も指定された治療法を5週間つづけた後、各グループの治療効果を評価。
その後、さらに5週間をおいて(この間は治療を停止)再び参加者を診断し、治療の効果がどれだけ持続しているかを調べました。
果たして、どんな結果が出たでしょうか?