巨大な電波望遠鏡を利用した「次世代惑星レーダー」
電波望遠鏡は宇宙から届く電波を受け取って情報として処理できるため、天体を観測するのに役立ちます。
アンテナのサイズが大きければ大きいほど高解像度の画像を取得できるため、電波望遠鏡は大きくなる傾向にあります。
実際、世界最大の可動式電波望遠鏡「グリーンバンク望遠鏡」のアンテナ部分は直径が100m以上にもなります。
とはいえ、地上に大きなアンテナを建造するのは容易ではありません。
宇宙空間に既存のものより巨大な宇宙望遠鏡を浮かべる方法も考えられますが、コスト的にも技術的にもさらに困難でしょう。
そのため別の手法として、地上に建造した複数の電波望遠鏡(アンテナ)を繋いで「疑似的な巨大電波望遠鏡」を構築する方法が生み出されてきました。
例えば超長基線アレイ(VLBA)は、アメリカ国土全体に配置された10台のアンテナによって構成されています。
つまり「国の面積ほど大きな電波望遠鏡」で超高解像度の画像を取得できるわけです。
そして現在、これらの巨大電波望遠鏡を利用した「次世代惑星レーダーシステム」が研究されており、さらに詳細な情報が得られるようになっています。
レーダーとは、電波を対象物に向けて発射し、その反射波を測定することで対象物の正確な情報を得る手法のことです。
小型デバイスを用いた船舶レーダーなどが身近な例ですが、これを宇宙規模で実施しようというのです。
次世代惑星レーダーシステムでは、電波送信機を装備したグリーンバンク望遠鏡を使用して目標の天体に電波を発射。
天体に当たって跳ね返ってきた電波を超長基線アレイの10台のアンテナで受信するよう計画されています。
つまり地上の「巨大な電波望遠鏡」で電波を飛ばして、その反射波を地上の「疑似的な超巨大電波望遠鏡」で受け止めるのです。
当然、電波は光速以下の速度なので何光年も離れた天体に使用するわけには行きませんが、地球にとって危険な小惑星を詳細に調査したり、太陽系内の惑星を調査する目的で活躍が期待されています。
この新技術は現在開発中ですが、低出力のプロトタイプを用いたテストが、これまでに行われてきました。
そして2023年1月10日、米国天文学会(AAAS)の第241回の国際会議で、これまでの成果がまとめて報告されました。