系外惑星の軌道をタイムラプスで再現!
今回対象となったのは、地球から約133光年の距離にある「恒星HR8799」です。
HR8799はペガスス座に属し、太陽の約1.5倍の質量と約5倍の明るさを持ちます。
太陽は誕生から約45億年ほど経っていますが、この星は約3000万年とかなり若い天体です。
また、HR8799の周囲には4つの太陽系外惑星が見つかっており、主星までの距離はそれぞれ15AU、24AU、38AU、68AU(1AU=地球から太陽までの距離)となっています。
質量はいずれも木星の5〜10倍とかなり大きいです。
地球は太陽を一年で周回しますが、HR8799に最も近い惑星でも1周するのに約45年かかり、最も遠い惑星では約500年かかるという。
それから、これらの惑星は「直接撮像観測」という、惑星そのものの光を直接捉える手法で発見された史上初めての太陽系外惑星でもあります。
太陽系外惑星はこれまでに5200個以上が知られていますが、その大半は間接的に見つかったものです。
たとえば、主星の前を惑星が横切ることで生じる光の変化(トランジット法)や、惑星の重力によって生じる主星の位置のズレ(ドップラー分光法)を検出することで惑星の存在を発見します。
しかしHR8799の惑星系は直接撮影できることから、2008年の発見以来、毎年観測が続けられてきました。
そこでノースウェスタン大のジェイソン・ワン(Jason Wang)氏を中心とする研究チームは、ハワイのマウナケア山頂にあるW・M・ケック天文台で撮影された12年分のデータを使い、HR8799惑星系のタイムラプス映像(写真を繋いだコマ送り動画)を作成することに。
ただし、12年分の観測データをそのまま繋げて圧縮するだけではタイムラプス映像になりません。
チームは、観測時の地球の大気によるブレを修正する「補償光学(adaptive optic)」と、主星(HR8799)からの光を遮断し、反射光で周囲の惑星を浮かび上がらせる「コロナグラグ」を使用して、撮影データを加工。
これをしなければ、大気の揺らぎで映像が鮮明でなくなったり、主星の明るさで惑星が見えなくなってしまいます。
そして最後に、映像処理の一種を使って各データの隙間を埋め、惑星の軌道の動きを滑らかにしました。
こうして出来上がったのが、以下のタイムラプス映像です。
中心部のHR8799(黒くなっているのはコロナグラフによる加工)から右手に3つの惑星、少し離れた左手に4つ目の惑星が薄く動いているのが分かります。
これにより、主星のまわりを公転する4つの惑星の壮大な動きを一望することができました。
本研究について、ワン氏は次のように述べています。
「タイムラプス映像で軌道を見ることで新たな知見が得られるわけではありませんが、私たちが研究していることを分かりやすく伝えるのには役立ちます。
通常、惑星の軌道を直接的に見ることは難しく、また実際の天体現象の多くは、動画にするには早すぎるか遅すぎるかのどちらかです。
しかし今回のようなタイムラプス映像を作ることで、私たちの時間スケールで惑星の動きを楽しむことができるでしょう」