なぜ今、金星と木星は大接近して見えるの?
昨年の夏頃から木星は夜空にひときわ明るく輝き、目を楽しませてきました。しかし、だんだん沈むのが早くなり、見納めを迎えつつあります。
これから木星は地球から見て太陽の裏側になり、いったん見えなくなります。
再び6月頃から夜明けの空に見えるようになりますが、多くの人は寝ている時間ですし、観測しやすい夜に見えるようになるのは夏まで待つ必要があります。
反対に、金星はこれまで「明けの明星」のターンで、夜明けに東の空に出ていました。それが現在「宵の明星」のターンとなり、ようやく観測しやすい高度まで上がってきたところです。
金星はこれから6月4日のもっとも高度が高くなる「東方最大離角」に向けて日々高度があがっていくので、どんどん観測しやすくなっていきます。
つまり、同じ時刻に観測すると木星は日々高度を下げていくのに対し、金星は逆に徐々に高度を上げているので、今回の大接近は木星と金星がちょうど上下の位置関係を入れ替えるタイミングなのです。
金星と木星の接近はいつ見るのがいい?
空が暗くなってからの方が星は輝いてきれいに見えますが、木星の高度はどんどん下がっていますし、金星や水星のような地球の内側の軌道を周る惑星(内惑星)はすぐ沈むので、日没ないし日の出前のわずかな時間しか見えません。
しかし、金星と木星は非常に明るいので、ほかの星がまだ見えない空が薄明るい時間から見ることができます。
なので、18時くらいから観察をはじめるのがおすすめです。
グラデーションがかった空に並んで見える様子から、暗くなりたての夜空にきらめく様子が楽しめるはずです。
このときの金星の明るさは−4.0等で、木星は−2.1等となっています。スマホでも難しい設定をせずとも簡単に写真が撮れるため、ぜひ記録におさめておきたいものです。
双眼鏡や望遠鏡での楽しみ方
肉眼でも楽しめるのですが、双眼鏡や望遠鏡を持っているなら、違った切り口で楽しめます。
今回の接近の際、金星と木星は見かけ上、満月1個ぶんほど離れて見えます。これは双眼鏡や低倍率の望遠鏡で見たときに、同一視野に2惑星が入り、同時に観測が可能な間隔です。
金星は月と同様に満ち欠けをするので、欠け具合も観測できます。金星は夕方に見える宵の明星のターンのときは、はじめは遠い位置にあってサイズも小さく、丸く見えます。
それが近づくにつれて欠けていき、最後は大きな三日月のかたちに見えます。
現在は金星が宵の明星として夕方に見え始めたばかりなので、まだ小さいサイズで丸っぽい形で見えるでしょう。
また、望遠鏡で見た場合、木星は周りのガリレオ衛星まで観測が可能です。
スマホでは厳しいですが、さまざまな天体の様子が同時に見えて、面白い写真が撮れそうですね。
ちなみに、3月31日には金星のすぐ左下に天王星が接近し、探しやすくなります。望遠鏡がある人は、こちらも観測に挑戦してみてはいかがでしょうか。
こちらの写真は2022年の11月8日は皆既月食と天王星食が同時に見られた際に撮影してみたものです。
このように天文台でなくとも、家の望遠鏡でも珍しい天体イベントは撮影可能なので、興味のある方はぜひ挑戦してみてください。
三日月と並ぶ星 金星と木星の接近していく様子
三日月と明るい星が並ぶ様子はデザインの定番でもあり、目をひきますよね。
今回も、空に三日月と金星と木星が一緒に見えたときからネット上で話題になっていました。そのときから、金星と木星がどのように接近していくのか、経過を観察していました。
こちらは、2月23日に撮影したものです。月の下にあるのが木星、その下が金星です。
同じ場所で2月26日に撮影したもの。
こちらは、2月28日に撮影です。数日でかなり近づいているのがわかります。
3月2日にはどうなるのか、自分の目で確かめてみてくださいね。
実は昨年も金星と木星の接近はあり、2022年の注目の天文現象でした。
なんといっても、2惑星の間隔が0°14’という近さだったので、大きなひとつの星のように見えるかもと期待がありました。
聖書において、キリスト生誕のクリスマスの日に、「ベツレヘムの星が輝いた」という話があるのですが、ベツレヘムの星は金星と木星の接近だったのでは?という説があるんです。そう考えるとますます興味深いですよね。
早朝でしたが、5月1日とGW中だったので観測に挑戦できたものの、残念なことに関東では当日雨。ほかの地方でも話題にならなかったので、全国的にあまり天気は良くなかったようです。
春になると天候が不安定になりがちですが、今回の金星と木星の接近は冬の終わりなので太平洋側を中心に天気に恵まれそうなところは多いです。
星空がきれいに見える、冬の天体観測のしめとしても味わうのもいいかもしれませんね。
ぜひ、空を見上げてみてください。