地元住民「マスクをしなければ立っていられないほどの悪臭」
こちらが先日17日(金)にTwitter上に投稿されたダーリング川の状況です。
一面に魚の死骸がぎっちり詰まっており、川がほとんど見えなくなっています。
A fresh maior fish kill at Menindee Weir pool near Broken Hill. Locals say one million dead. @2GB873 @9NewsSyd pic.twitter.com/YCkA78NbgL
— Chris O’Keefe (@cokeefe9) March 17, 2023
州政府の漁業報道官であるキャメロン・レイ(Cameron Lay)氏は「見渡す限り魚がいる場所が何十キロも続いていおり、非常につらい光景です」と話しています。
メニンディーは都市部から離れた田舎町であり、人口は約500人と少ないですが、住民はこの地獄絵図に不安の色を隠せません。
地元の自然写真家であるジェフ・ルーニー(Geoff Looney)氏は、先週16日(木)に現場で魚の大量死を目撃し、「悪臭がひどく、マスクをしなければ立っていられないほどでした」と話します。
また「ダーリング川の上流の水は町のポンプ上にも流れ込んでいるため、自分の健康が心配になりました」と続けます。
数百万匹におよぶ魚の大量死はなぜ起こった?
こうした野生下での魚の大量死は、現地で「フィッシュキル(Fish kills)」と呼ばれています。
フィッシュキルはどの時期でも発生する可能性がありますが、過去のデータによると、夏場の猛暑や気温の急激な変化で最も発生率が高まるという。
南半球に位置するオーストラリアは北半球とは季節が逆になり、12月〜2月が夏で、3月に入っても十分な暑さが残ります。
特にメニンディーは近年、干ばつと洪水の両方に見舞われており、同地域でフィッシュキルが起きるのは2018年以来3度目です。
2019年には、長引く干ばつと川面に大量発生した有毒藻類が原因で、約40キロメートルにわたり数十万匹の魚が死んでいます。
州政府は当時「残念ながらこれが最後にはならないだろう」と警告していましたが、まさにその予感は的中してしまいました。
しかも今回のケースは、前回の規模をはるかに上回る数百万匹の魚が被害を受けています。
州政府によると、マニンディーでは2月下旬から3週間ほど大雨が続いたことで、町が洪水に見舞われていたといいます。
そのせいでダーリング川が増水し、川魚たちが一挙に大繁殖していました。
ところが大雨が止み、洪水が引いたことで、川の水位が大幅に下がり、一転して大量の魚たちが死んでしまったのです。
州政府は「今回の魚の大量死は、洪水が引いたことによる水中の酸素濃度の低下(低酸素症)が関係している」と指摘。
加えて「暖かい水は冷たい水よりも酸素を保持しにくく、魚は温度が高いほど多くの酸素を必要とするため、現在も続くマニンディーの暑さが川の低酸素症を悪化させている」と説明しました。
それまで豪邸に住んでいた大家族が突然、四畳一間に押し込まれるようなものでしょう。
ダーリング川では、ボニーブリーム(Bony bream)といった小型の淡水魚から、マーレーコッド(Murray cod)などの大型魚まで被害を受けています。
ニューサウスウェールズ州西部の全域ではまだ暑さが続くため、今後もしばらく被害が拡大すると懸念されています。