『007/カジノ・ロワイヤル』に登場した毒物「ジゴキシン」
ジェームズ・ボンドシリーズの映画『007/カジノ・ロワイヤル』では、カジノのポーカー勝負の場面で、悪役がジェームズ・ボンドのマティーニにジギタリス系の毒を盛ります。
ボンドは応急処置とAEDの電気ショックによって何とか息を吹き返していました。
ここに登場するジギタリスとは地中海を中心にアジアや北アフリカ、ヨーロッパに分布する植物です。
そしてこの葉から抽出されるジゴキシンは、心臓の収縮力を強める薬として利用されています。
心臓の筋肉(心筋)が収縮するには、心筋の細胞の中にカルシウムが入らなければいけませんが、ジゴキシンは、心筋の中のカルシウム濃度を増大させることで収縮力を強くしています。
そのためこの薬は、心不全などで心臓が弱っているときに用いられます。
ところがジゴキシンを大量に摂取すると、心室細動に移行する場合があり、死に至る恐れがあります。
推定致死量は10mg以上だと考えらえています。
毒性学の父と呼ばれたパラケルスス氏は、「全てのものは毒であり、毒でないものなど存在しない。その服用量こそが毒であるか、そうでないかを決めるのだ」という格言を残しており、ジゴキシンはまさにこのケースに該当するでしょう。