横溝正史『八つ墓村』に登場する毒物「ストリキニーネ」
アガサ・クリスティーの推理小説『スタイルズ荘の怪事件』では、スタイルズ荘の女主人が「ストリキニーネ」で毒殺されます。
ストリキニーネは、インドや東南アジア、オーストラリアに分布する植物マチンの種子から得られます。
ストリキニーネは非常に毒性が強く、体内に入ると、脊髄や脳幹に多く存在する「グリシン」を遮断します。
このグリシンは通常、抑制性神経伝達物質として働いており、ニューロンの活動を遅くし、筋肉の収縮を防いでいます。
ところがストリキニーネを摂取すると、これらの機能が遮断されるため、ニューロンと筋肉の過剰な活性化がもたらされます。
結果として、激しい痛みを伴って全身の筋肉が痙攣し、最悪の場合、呼吸麻痺により死に至ります。
人体における致死量は体重1kgあたり1mgです。
既知の毒物の中でも劇的な痛みを生じさせることで知られており、その特性から文学などで描かれることが多いようです。
横溝正史の推理小説「八つ墓村」でもストリキニーネが使用されています。
ドラマや小説に登場する毒物がどのように人を殺すか解説してきました。
フィクションの中で毒物を口にした被害者は、一様に苦しんで倒れています。
しかしその体内では、毒物の種類や量によって様々な反応が生じており、死に至る経緯は全く異なるのです。
どのように抽出され、どう作用するかは物語を読む人より作りたい人にとって重要な情報かもしれませんが、たまには毒物の中身について興味を向けてみるのも面白いかもしれません。