4〜5時間未満の睡眠で事故リスクが2倍に!
飲酒運転による自動車事故はここ20年で、世界的に大幅な減少傾向にあります。
飲酒検問の増加や罰則の強化、公的な呼びかけにより、多くのドライバーが注意するようになっているためです。
また飲酒運転の場合は、血中アルコール濃度が0.05%以上(※ 日本の道路交通法では0.03%以上)という明確な基準値があることも検査のしやすさと関係しています。
その一方で、疲労による自動車事故は過去20年間でほぼ減少していません。
事故全体の約20%は疲労が原因であるにも関わらず、飲酒運転と違って明確な基準値がないため、検問や取り締まりが難しいのです。
そこで研究チームは、疲労と密接に関連する「睡眠時間」を指標にして、事故リスクが高くなる基準値を探りました。
調査では、実験室やフィールドで行われた睡眠負債と自動車事故に関する61の先行研究を総合して分析。
(※ 睡眠負債:睡眠不足の蓄積により心身の不調を来してしまう状態のこと)
その結果、運転前24時間における睡眠時間が4〜5時間未満である場合に、自動車事故を起こすリスクが約2倍高くなることが判明したのです。
これは血中アルコール濃度が0.05%のときに見られる事故リスクと同じでした。
それだけでなく、ドライバーの事故リスクは睡眠時間が1時間短くなるごとに大幅に増加していました。
前夜の睡眠時間が0〜4時間だった場合では、事故リスクに最大15倍の開きが見られたのです。
つまり、睡眠時間が短いほど疲労度も高まり、自動車事故のリスクも増大すると言えます。
チームは以上の科学的根拠にもとづき、「ドライバーが運転前に一定の睡眠時間を確保することを法的に義務付けることは合理的な判断である」と述べました。
もし飲酒運転と同じような基準値(日本では血中アルコール濃度0.03%以上)を設けるなら、「運転前に最低4〜5時間以上の睡眠」の義務付けを検討すべきでしょう。
他方で、研究者らは「疲労状態での運転を取り締まる前に、もっと多くのことを見直さなければならない」と話します。
というのも、飲酒はほとんどの場合、個人が選択して行うことですが、寝不足での運転は個人では改善しようがない部分があるからです。