三階建ての多目的軌道モジュール「エアバスループ」
地上約400kmに存在する国際宇宙ステーション(ISS)は、約108.5km×72.8kmでありサッカー場とほぼ同じサイズです。
そんな巨大なISSは、国際パートナー各国の宇宙飛行士が使用する「実験モジュール」が組み合わさって成り立っています。
例えば、アメリカ製の実験モジュール「デスティニー」は、全長8.53m、直径4.27mのサイズであり、内部に運ばれた機器や取り付けた微小重力施設によって様々な実験を行えます。
1つ1つのモジュールはそこまで大きくありませんが、複数のモジュールが結合し、左右にソーラーパネルが広がることで、全体として巨大な宇宙ステーションになっているのです。
そして2011年に完成したISSは、各パーツの耐用年数を考慮して運用期限が定められています。
この運用期限は度々延長されてきましたが、2030年にはISSの役割を終え、2031年初頭に太平洋に落下させる予定です。
そのためISSの後継を開発する動きが加速しており、NASAは民間企業のブルーオリジン社やナノラックス社などに新しい宇宙ステーション開発の資金を提供しています。
こうした動きが見られる中で、今回エアバス社は「エアバスループ」と呼ばれる新しい多目的軌道モジュールを発表したのです。
エアバス社によると、エアバスループの直径は約8mであり、ISSに結合された従来のモジュールよりも広々としています。
4人の宇宙飛行士が生活する想定で開発されますが、一時的に最大8人を収容することも可能です。
3つのデッキで構成された3階建てのモジュールであり、中央のトンネルを利用して居住区や科学区を行き来できます。
また中央のトンネル周辺には温室も備わっており、宇宙飛行士が食べるための野菜を育てることも可能なのだとか。
さらに1つのデッキには遠心分離機が設置される予定であり、遠心力により地球と同じような重力環境を作り出すことができます。
宇宙飛行士たちは、このデッキで一時的に微小重力環境から解放され、人体への負担を軽減することができます。
加えてエアバスループは、最近飛行試験を行ったスペースX社の宇宙船「スターシップ」を含む「次世代の超重量級ロケット」に対応するように設計されており、モジュール全体を1回の打ち上げで軌道上まで運び、そのまま展開して運用開始することが可能と言われています。
エアバス社によると、エアバスループは今後10年以内に打ち上げられる可能性があるようです。
そしてエアバスループのモジュールをいくつか組み合わせることで、より大きな宇宙ステーションにする選択肢もあります。
エアバスループはISSの後継機に決まったわけではありませんが、エアバスは後継機の選定とは別に、2030年初頭に、このエアバスループを打ち上げる予定でいると話しています。
いずれ、この宇宙ステーションが地球の周りに浮かぶことになるのかもしれません。