火星の心臓部が何でできているかをついに解明!
火星の心臓部が何でできているかをついに解明! / Credit: NASA/JPL and Nicholas Schmerr – University of Maryland(2023)
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すべて液体状!火星の大地震から「火星コアの実態」をついに解明!

2023.04.26 Wednesday

火星の心臓部には何が隠されているのか、その秘密がついに明かされました。

米メリーランド大学(University of Maryland)、英ブリストル大学(Bristol University)らは今回、火星で発生した地震波がどのように火星のコアを伝播するかを調査。

その結果、火星の中心部は地球とは違い、すべて液体状の鉄合金からなることが初めて突き止められました。

さらにそこには軽い元素で知られる「硫黄」が大量に含まれていたとのこと。

これらは火星に生命の存在を可能にする”磁場シールド”がない理由を説明するヒントとなります。

研究の詳細は、2023年4月24日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されました。

In an Incredible First, Scientists Have Discovered What’s at The Core of Mars https://www.sciencealert.com/in-an-incredible-first-scientists-have-discovered-whats-at-the-core-of-mars Scientists Detect Seismic Waves Traveling Through Martian Core for the First Time https://cmns.umd.edu/news-events/news/scientists-detect-seismic-waves-traveling-through-martian-core-first-time
First observations of core-transiting seismic phases on Mars https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2217090120

地震波の伝わり方からコアの組成を解き明かす

地震は単に地表面を揺らすだけの振動ではありません。

専門家らは100年以上前から、地震波が惑星に対する一種の音響X線(acoustic X-ray)として利用できることを知っていました。

地震波が発生地点から地球の内部に伝わると、液体を通過するのか固体を通過するのかで伝播の仕方が大きく変わります。

その伝播や反射データをもとに、内部の組成マップを作ることができるのです。

この手法は1906年に実際に使われ、地球のコアが固体の内核と液体の外核(どちらも主成分は鉄)からなることを明らかにしました。

地球内部の構造
地球内部の構造 / Credit: ja.wikipedia

メリーランド大学の地質学者で研究主任のヴェドラン・レキッチ(Vedran Lekic)氏は「それから100年以上経った今、私たちは同じ手法を火星に適用することにしたのです」と話します。

今回使用されたのは、NASAの火星探査機インサイト(InSight)が過去4年間にわたり収集した地震データです。

インサイトによる火星内部の観測イメージ
インサイトによる火星内部の観測イメージ / Credit: ja.wikipedia

インサイトはこれまでに火星表面で数百回の火山性地震を検出し、火星の内部に関する詳細な情報を得ています。

さらに2021年に、インサイトがいる地点のほぼ反対側で起きた2つの途方もない巨大地震のおかげで、これまでにない詳細な火星内部のデータが得られました。

火星コアを間に挟んで地震波が得られたのはこれが初めてでした(下図)。

2つの巨大地震が発生した地点(青星と赤丸)
2つの巨大地震が発生した地点(青星と赤丸) / Credit: Vedran Lekić et al., PNAS(2023)

そしてインサイトは火星の表面と内部を伝播する衝撃波を分析することで、ついに火星コアの実態を解き明かしたのです。

結果、火星コアは地球とは違い、すべてが液体状の鉄合金でできていることが判明しました。

地球は先述したように、内核が固体で外核が液体です。

地球・月・火星を伝播する地震波からコアの実態を調査
地球・月・火星を伝播する地震波からコアの実態を調査 / Credit: Vedran Lekić et al., PNAS(2023)

さらに火星はコアに含まれる軽い元素の割合が非常に高く、コア重量の約5分の1が硫黄を中心とした軽元素で、その他に酸素や炭素が存在していました。

これは地球コアに含まれる軽元素の割合が比較的少ないのとは異なり、地球コアよりも密度が低く、圧縮性が高いことを意味します。

そしてこの違いから、生命の存在にとって重要な”磁場シールド”が火星にない理由が説明できるかもしれません。

次ページなぜ火星には「磁場シールド」がないのか?

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