なぜ火星には「磁場シールド」がないのか?
地球には、その表面を覆うようにして磁場のシールドが幾重にも張られています。
磁場は太陽風が地上に直接降り注ぐのを防ぎ、大気や水を守ってくれています。
もし磁場シールドがなくなると、太陽風が直接惑星に当たることで大気は宇宙空間に飛散し水も失われてしまいます。
そうなれば生命は生きられない星になってしまうでしょう。
この生命の存在にとって重要な磁場は、地球内部の大規模な流体運動によって生成します。
内核(固体)の熱が外核(液体)に移動することで循環流が発生し、さらに自転の影響を受けて、現在の放射状のパターンに広がるのです。
これを「ダイナモ理論(geodynamo)」と呼びます。
一方で、火星には地球のような磁場シールドがないことが知られています。
今回判明した火星コアにもとづくと、軽元素の多さや密度の低さが、火星における磁場の発生および維持を阻害している可能性があるようです。
しかし過去の研究では、約40億年前の火星には磁場が存在していたことが示されています。
それがなぜ現在のような火星コアになり、磁場が消えてしまったのかはまだ分かりません。
レキッチ氏は「まるで穴埋めパズルのようなものだ」と話します。
「本研究では、火星コアに水素の痕跡がわずかに見つかっており、火星にはかつて水素が豊富に存在できるような環境があったことが窺えます。
火星がどのような変遷をたどって今日の姿になったかを理解するには、更なる研究が必要です」
その穴埋めをする上で、今回判明した火星コアの実態は貴重なヒントとなるでしょう。