ふたご座流星群を生み出す小惑星ファエトンの尾はなんなのか?
新しい仮説を確かめるために行った「モデル化と実験室でのテスト」では、太陽の強烈な熱が小惑星内のナトリウムを蒸発させ、彗星のような活動を引き起こす可能性があると示唆されました。
そこで研究チームは今回、このモデルを証明するため、太陽観測衛星「STEREO」と、NASAとESAによって開発された太陽圏観測機「SOHO」が捉えた1997~2022年の間の18枚のファエトンの尾の画像を集めました。
SOHOにはナトリウムと塵をそれぞれ検出できるカラーフィルターが備わっています。
そしてナトリウムを検出するフィルターをかけるとファエトンの尾ははっきりと明るく見えましたが、塵を検出するフィルターではファエトンの輝きは見えませんでした。
この結果は、研究チームの推測通り、ファエトンの尾が塵ではなくナトリウムでできていることを示しています。
つまり小惑星ファエトンの尾は主にナトリウムガスの放出で生じたものであり、これまでに観測されてきた他の「尾を持つ小惑星」も同じ原理である可能性があります。
研究チームはこの発見の重要性を強調して、「14年間の考えを覆すような、本当に素晴らしい結果が得られた」と述べています。
しかも調査に用いられたSOHOやSTEREOは、「本来このような現象を研究するためのものではない」とのこと。
分析方法から結果まで、全体を通して驚きの強い研究だったのです。
とはいえ、今回の研究結果によって「ふたご座流星群の謎」も残されました。
母天体と考えられていたファエトンが主に放出していたのがナトリウムガスであり、塵は少量しか放出していませんでした。
そうであれば、「毎年12月に観測されるふたご座流星群の物質(塵の帯)はどのように供給されているのか?」という疑問が生じるのです。
研究チームは、「数千年前に生じた何らかの破壊的な出来事によってファエトンの一部がバラバラになり、それによって数十億トンもの物質が放出され、ふたご座流星群の塵の帯が形成された」と推測しています。
もちろん、この仮説の真偽も調査によって明らかにする必要があり、今後もファエトンは謎と不思議を抱えた特殊な小惑星として、私たちの注目を集めるはずです。