「一人称」と「三人称」の写真はどう違う?
研究チームは今回、写真の「人称」の違いに注目し、一人称の写真と三人称の写真に分けました。
その違いを一言でいうと、自分の目線で撮ったか、他人の目線で撮られたかです。
一人称とは、自分が直接カメラのレンズを覗いて撮る写真を指すので、必然的に自分は写り込まないことになります。
たとえば、美しい景色や動物、料理の写真などがこれにあたるでしょう。
一方、三人称の写真とは、誰かの目線で撮影された写真を指すもので、そこには自分も写り込むことになります。
たとえば、近くの人に撮ってもらった記念写真や、カメラを自分に向けて撮った自撮りなどが三人称の写真にあたります。
本研究では、一人称と三人称の写真がそれぞれどんな目的をもって撮影されるのかを調べました。
一人称は「記録」、三人称は「記憶」のために撮る?
チームは、プライベートな写真撮影における「人称の違い」の影響を探るため、2113人の参加者を対象とした一連の実験を行いました。
オンライン研究では、親しい友人や家族とビーチで一日を過ごすなど、写真を撮りたくなる幾つかのイベントのシナリオを参加者に読んでもらい、どんな写真を撮るかを質問します。
次に、それぞれの写真に関するイベント自体の重要性(たとえば念願だったハワイの海をやっと見れたとか、滅多に見れない動物に遭遇したとか)と、人生における深い意味(たとえば大切な友人や恋人、家族と過ごしたこの一瞬を残したいという想い)を評価してもらいました。
より端的に表現すれば、前者は「記録」に、後者は「記憶」に近いと言えるかもしれません。
そして分析の結果、参加者がイベント自体の重要性を高く評価するときほど、一人称の写真(自分を含まない写真)を撮影し、人生における深い意味を重視するときほど、三人称の写真(自分を含めた写真)を撮影すると答えていたのです。
また別の実験では、参加者のインスタグラムに投稿された写真についても、どういった感覚が換気されるか本人に評価してもらいました。
すると、自分が写っていない写真は「イベント自体の重要性」と、自撮りや友人とのツーショット写真は「人生における深い意味」とより強く関連していることが示されたのです。
つまり、”記念”や”記録”を残したいときは自分の映らない写真を撮り、大切な一瞬間を”記憶”したいと思ったとき自撮りや記念撮影をすると言えるでしょう。
加えて、写真の人称と撮影の目的との間に本人のミスマッチがある場合は、その写真に対してポジティブな評価をしなくなるという面白い結果も見られました。
たとえば、景色の美しさを残したかったときに自撮りで自分や他人が写り込んでいたり、反対に、友人や恋人との大切な一瞬を残したい場面で景色しか写っていなかったときなどです。
これを受けて、研究主任のザカリー・ニース(Zachary Niese)氏はこう話します。
「今回の研究結果には、人々が自分の望む写真にふさわしい撮影視点(人称)を直感的に理解していることが示されています。
また今回の知見により、人々は自分の目的を最もよく満たしてくれる撮影視点を意識的に選べるようになるはずです」
目の前の一瞬を「記録」したいのか「記憶」したいのかを意識することで、心に残る写真が撮りやすくなるかもしれません。