2万年前のシカの歯ペンダントから「女性DNA」の採取に成功!
2万年前のシカの歯ペンダントから「女性DNA」の採取に成功! / Credit: MPI for Evolutionary Anthropology(2023)Myrthe Lucas(Marie Soressi/Twitter,2023)
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2万年前の古代遺物から「触れていた古代人のDNA」を採取する新技術!

2023.05.20 Saturday

古代の人工物からヒトDNAを抽出する驚きの技術が確立されたようです。

独マックスプランク研究所(MPI)の進化人類学研究チームは、歴史的な遺物を傷つけることなく安全に環境DNAを取り出す方法を発見し、それを約2万年前のシカの歯で作られたペンダントに適用。

その結果、当時シベリアに住んでいた女性のDNAの採取に成功しました。

これは古代人の歯や骨だけでなく、先人たちの残した人工物もヒトDNAの供給源となることを示す貴重な成果です。

研究の詳細は、2023年5月3日付で科学雑誌『Nature』に掲載されています。

Ancient Woman’s DNA Recovered From 20,000-Year-Old Necklace Pendant https://www.sciencealert.com/ancient-womans-dna-recovered-from-20000-year-old-necklace-pendant Scientists recover an ancient woman’s DNA from a 20,000-year-old pendant https://phys.org/news/2023-05-scientists-recover-ancient-woman-dna.html Traces from the past https://www.eva.mpg.de/press/news/article/traces-from-the-past/
Ancient human DNA recovered from a Palaeolithic pendant https://www.nature.com/articles/s41586-023-06035-2

古代の人工物からDNAを「洗い出す」方法を開発

生きとし生けるものは細胞が壊れたり剥がれ落ちたりする際に、ヘンゼルとグレーテルのごとく、周囲に微かなDNAの足跡を残します。

こうした土壌や水中、大気、あるいは人工物といった環境中から採取できるDNA「環境DNA(eDNA)」です。

近年では、これら環境DNAを見つけて採取する技術が驚くほど進歩しています。

たとえば、生体から直にDNAを採取する従来の方法では追跡が難しかった絶滅危惧種も、環境中のわずかな痕跡からその存在を確認できるようになったのです。

そして研究チームは今回、歴史的な人工物から安全に環境DNAを抽出する最新技術を確立しました。

古代人のDNAは一般に本人の歯や骨、毛髪から採取されます。

一方で、彼らの残した人工物は当時の暮らしや文化を知る手がかりにはなりますが、それを作ったり使った人を遺伝的に特定することは極めて困難でした。

しかし人工物に遺伝情報を含む皮膚細胞や血液、汗、唾液が付着していれば、DNAの採取も不可能ではありません。

そこでチームが開発したのは、リン酸塩ベースの特殊な化学物質に人工物を浸して、中に保存された環境DNAを洗い出すという方法です。

人工物の微小な穴に液体状の化学物質が浸透し、徐々に温度を上げることで、中に隠されたDNA断片が外に出てきます。

人工物から非侵襲的にDNAを抽出する新技法
人工物から非侵襲的にDNAを抽出する新技法 / Credit: Elena Essel et al., Nature(2023)

研究主任のエレナ・エッセル(Elena Essel)氏は「これは古代遺物の洗濯機のようなもので、溶液の温度を高めることで遺物を一切傷つけることなく環境DNAを取り出せるのです」と説明します。

チームはこの手法を2019年にロシア南部アルタイ山脈にあるデニソワ洞窟で見つかった「シカの歯のペンダント」で実践することにしました。

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