脳内の動脈と静脈が直につながってしまう病気に
米ルイジアナ州在住のケニヤッタ・コールマンさん(Kenyatta Coleman)は昨年、36歳で4人目を妊娠し、幸せの最中にありました。
ところが妊娠30週目に超音波検査を受けた際、胎内の赤ちゃんの脳に異常があることが発覚したのです。
医師の診断で下されたのは「ガレン静脈奇形(vein of Galen malformation : VOGM)」という病気でした。
![エコー(超音波)検査で撮影された胎児の画像](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2023/05/0a78c907139e9344744506bfb14d00c3-702x600.jpg)
これは簡単にいうと、脳のある部分で動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接つながってしまい、血管のかたまり(専門的にはナイダスと呼ぶ)ができてしまう先天性疾患です。
正常な胎児では、動脈と静脈の間の毛細血管が血圧を下げるクッションとして働きます。
しかし毛細血管がないと動脈の血流がそのまま静脈に流れ込むため、血圧が高くなり、薄い血管の壁を破りやすくなるのです。
そうなると脳出血やくも膜下出血といった命にかかわる症状が起こってしまいます。
無事に生まれてきたとしても、血流異常から心臓や肺に大きな負担がかかり、心不全や肺高血圧症(心臓から肺へ血液を送る血管の血圧が高くなる病気)の発症率も高まるのです。
従来の治療法は?
この病気は一般に「血管内塞栓術」という方法で治療されます。
これは胎児が生まれた後に、カテーテルを脳内の患部に挿入し、動脈と静脈の結合部に液体状の塞栓物質を注入して固めることで、異常な血流を遮断するというものです。
新生児にも比較的負担の少ない方法とされていますが、それでも出産後では手遅れになるケースが多いといいます。
また研究主任のダレン・オーバック(Darren Orbach)医師は「手術に成功した場合でも重度の神経的および認知的な障害が残りやすい」と話します。
そこで研究チームは、胎児が母親のケニヤッタさんのお腹にいる状態で、血管内塞栓術を世界で初めて行うことにしました。