胎内にいる赤ちゃんの外科手術に初成功!
手術は今年3月15日、ケニヤッタさんの妊娠34週と2日の時点で実施されています。
医師団はまず、超音波ガイドで胎児の姿勢をモニタリングしながら、頭が母体の腹壁に向いていることを確認する必要がありました。
さらにその位置から動かれてはまずいので、頭が最適な位置に来たときに少量の麻酔を注射して胎児の動きを止めています。
そこからチームはケニヤッタさんの腹壁から細い針を刺し、胎児の頭まで慎重にカテーテルを通し、脳内の患部まで挿入。
血管内塞栓術と同じ方法で、動脈と静脈の間の異常な血流を遮断し、血圧が正常値まで低下するのを確認しました。
![A手術前の患部、B静脈内を通るカテーテル(青矢印)、C塞栓後の正常な血流](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2023/05/6693e84012fb4afb2d6c7092beac557c-1.jpg)
これは胎内の胎児に対する世界初の手術の成功例とのことです。
そして2日後の3月17日、手術を受けた胎児は元気な女の子として無事に産声を上げています。
女児はデンバー・コールマン(Denver Coleman)ちゃんと名付けられました。
母親のケニヤッタさんは「初めて泣き声を聞いた瞬間は言葉にならないほどの感動を味わいました」と話しています。
後遺症もなくスクスクと元気に成長中
![無事に生まれたデンバーちゃん(CBS Bostonより抜粋)](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2023/05/a5234d18a39c789044d37aec593519ed-900x494.jpg)
研究主任のオーバック氏は「術後から6週間が経過した時点で、女児は驚くほど順調に成長している」と説明。
「他の赤ちゃんと同じようによく食べ、よく寝て、体重も増えており、脳への悪影響も見られず、薬の服用もしていません」と続けています。
出生後のエコー(超音波)検査でも心拍数は正常でした。
数週間は病院で見守られていましたが、何らの異常も見られないので、現在はすでに自宅の家族の元に帰っているとのことです。
オーバック氏は最後にこう話しました。
「今回の胎内手術は世界初の成功例であり、ガレン静脈奇形の治療におけるパラダイムシフトとなる可能性を秘めています。
私たちは今後、同じ病気を抱える胎児にも普遍的に手術を行えるよう、手術の効率や安全性を向上させていくつもりです」