「生体認証付きスマートガン」は世界に広がるか?
バイオファイアー社が発表したこのスマートガンは、近未来的なフォルムの9mm拳銃です。
そして光学式指紋センサーと3D赤外線顔認証の2種類の生体認証システムが備わっており、登録された真の所有者のみが発砲できるようになっています。
ユーザーがスマートガンを握るとその中指の指紋をスキャンし、同時に銃の後部でユーザーの顔を確認できるのです。
クレプファー氏は、「大切なのは、常にロックがかかっていることと、即座に使用できることだ」と述べており、ユーザーが触れるとスマートガンは即座に反応し、生体認証システムを通して認証を行うようです。
購入を希望している人は、「従来の銃を金庫に入れておくよりは、即座に使用できるスマートガンを近くに置いておくほうが良い」とその利点を認めています。
スマートガンは正規のユーザーが持っている間はロックが解除された状態を維持します。
ユーザーの手が離れるとミリ秒単位でロックがかかるため、誰かにスマートガンを奪われても不正使用される心配はありません。
現在、バイオファイアー社のスマートガンは1500ドル(約20万円)で予約注文を受け付けており、2024年に出荷される予定です。
非営利団体「Gun Violence Archive」によると、アメリカでは2023年の最初の4カ月だけで、既に1万3900人が銃によって亡くなっています。
では、こうしたスマートガンの取り組みで、本当に銃による死亡事故を減らせるのでしょうか?
バイオファイアー社は、「アメリカでの銃を使った自殺の3分の2を防げる。2018年であれば、2万2000人の命が救われたはずだ」と主張していますが、誇張された分析だと感じる専門家もいるようです。
とはいえアメリカでは自殺の半数に銃が使用されているため、確かに親の銃を使って自殺する子供は減ることでしょう。
また銃の誤使用で亡くなる子供も減少するはずです。
それでも一社からスマートガンが発売されるだけでは、銃乱射事件を無くすことはできません。
社会全体からスマートガン以外の銃器を排除できるなら一定の効果が得られるはずですが、現状では夢物語のようにも思えます。
「生体認証付きの銃」は今やSFではありませんが、「生体認証付きの銃だけが許可された世界」は、未だにSFの領域です。
バイオファイアー社が投じた一石の波紋が、今後アメリカ全土や世界に広がっていくのか、それとも無かったことになるのか、結果は近いうちに判明するでしょう。