なぜひとは誤情報を信じ続けるのか?「フェイクニュースは事実検証では止められない」
なぜひとは誤情報を信じ続けるのか?「フェイクニュースは事実検証では止められない」 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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なぜひとは誤情報を信じ続けるのか?「フェイクニュースは事実検証では止められない」 (3/3)

2023.05.12 Friday

前ページファクトチェックが上手く機能しない背景に潜む「確証バイアス」

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目の前に事実が書かれた記事があっても4割のひとはクリックしない

信じた情報は真実よりも重い、そんな人間心理がフェイクニュース根絶を阻んでいます
信じた情報は真実よりも重い、そんな人間心理がフェイクニュース根絶を阻んでいます / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

調査に当たってはまず506人の参加者が集められ、ニュースサイトを用いて、新型コロナウイルス関連の話題に対して参加者それぞれがどのような内容を信じているかが調査されました。

結果、かなりの人々が何らかのフェイクニュースを信じていることが判明します。

次に研究者たちは、実験用のニュースサイトに参加者おのおのが信じているフェイクニュースの検証記事リンクを提示し、どれだけ検証記事がクリックされたかを調べました。

結果、検証記事を積極的にクリックするのは全体の57%のみであり残りの43%は検証記事のクリックを避け別の記事を選んでいたことが判明します。

さらに検証記事を避けがちな43%の人たちに着目してクリック記録を追跡すると、実際に自分の信念に反する検証記事をクリックしたひとはわずか7%しかいないことが判明します。

検証記事を避ける傾向にある人が検証記事を「実際に」クリックするケースはわずか7%に過ぎませんでした
検証記事を避ける傾向にある人が検証記事を「実際に」クリックするケースはわずか7%に過ぎませんでした / Credit:Yuko Tanaka et al . Who Does Not Benefit from Fact-checking Websites? . CHI ’23: Proceedings of the 2023 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (2023)

つまり自分の誤った信念を正してくれる「ドンピシャな検証記事」に気軽にクリックできる環境を用意しても、全体の40%にあたる参加者は実験終了まで検証記事にノータッチのままでした。

(※全体の43%のうちのさらに93%は39.999%となります)

この結果は、確証バイアスがクリック行動にも明確に作用しており、正しい情報を記載した検証記事が目の前にあったとしても、フェイクニュースを信じている人には届かないことを示します。

もしファクトチェックの効果を上手く引き出そうとするならば、この40%がどんな人なのかを知る必要があります。

そこで次に研究者たちはファクトチェックを行う可能性の低さが、どんな性格特性と連動しているかを調べることにしました。

すると、デタラメな情報を反射的に信じたり、デタラメな情報に奥深さを感じてしまう特性を持っている人ほど、自分の信念に反する検証記事に対して心を閉ざす(クリックしない)ことが明らかになりました。

このような性格特性を持つ人は「reflexive open-mindedness」と呼ばれ、分析的に考えることなく他人の主張を過度に信じ込む傾向があります。

(※「reflexive open-mindedness」を平易な日本語で表現すれば「反射的に広く受け入れる人」と言えるでしょう)

フェイクニュースを反射的に信じるならば、正しい検証記事の情報もすぐに信じてくれそうと思うかもしれません。

しかし、このような人たちは最初に目にした情報を強く信じ込み、以降それに反する情報を軽視するようになってしまうため、検証記事があってもスルーして情報の訂正を行わなくなってしまいます。

この特性を持つ人々は、最初に触れた情報を反射的に重要視するため、最初に正しい情報に触れれば、以降はそれを過剰に信じ込みがちです。

正しい情報を信じるならば問題はなさそうですが、いずれにしろ無批判・無分析で情報を受け入れてしまうため健全とは言い難い人たちです。

情報化された現代では、このような性格特性を持つ人はいったん信じ込めば検証記事にアクセスしようとしないため、フェイクニュースの発信者にとって最優先で狙う弱者となってしまいます。

ファクトチェックが上手く機能せずフェイクニュースの拡散が止まらないのは、最も救わなければならない弱者が最も救出困難であるからだと言えます。

目の前に真実があっても手が伸ばせない彼らを救うには、既存の事実をわかりやすく説明するだけでなく、もっと別のアプローチが必要になるでしょう。

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