ファクトチェックが上手く機能しない背景に潜む「確証バイアス」

なぜファクトチェックが十分な効果を得られないのか?
研究者たちが着目したのは「確証バイアス」と呼ばれる人間の心理傾向でした。
確証バイアスとは、「そうに違いない!」と思い込む人間の心理傾向を表す用語です。
私たちには自分の思い込みや願望を支えてくれる情報を探す一方で、そうでない情報については軽視したり無視したりする心理傾向があります。
わかりやすい例をあげれば、嫌いな国や政党に関する情報への接し方があげられます。
嫌いな国や政党などの組織がある場合、それらの組織が「負けた」「失敗した」「もう終わりだ」というニュースに人々はすぐに飛びつきます。
一方で嫌いな組織が「勝った」「成功した」「未来のリーダーになる」といったニュースが流れても、思い込みや願望が強いほど(バイアスが強いほど)その情報を見ようとしません。
身近な人に対する印象でも、この効果は発揮されます。例えば、一度周囲に「不真面目」「勤務態度が悪い」と評価されてしまった人は、遅刻や早退が平均より少なくても「多いに違いない」と思い込まれてしまいます。
すると遅刻や早退が少ないという単純な事実があっても、それが軽視されるか無視されることになるのです。
このように確証バイアスはどこにでも存在する、人間にとって普遍的な心理傾向となっており、フェイクニュースを信じてしまった人にも同様に働く可能性があります。
この問題を検証するために、今回研究チームは人々の「クリック行動」を調査することにしました。
かつては情報を得るために多くの労力が必要だったため、確証バイアスの影響は大きく出てしまいがちでした。
たとえばアメリカで共和党支持の人は、当然共和党寄りのテレビやラジオを見るので、裏でやっている民主党寄りのラジオやテレビ番組は録画でもしなければ見る機会がありませんでした。
民主党寄りの新聞や雑誌もお金を払って買わなければ、見る機会はありません。
つまり、実際にはさまざまな意見や考えを広く知りたいと思っていても、特定の情報だけに偏ってしまう状況が起こりがちでした。
対して現代では、ネットやスマホで暇つぶしをしているだけで大量の情報が無料で流れ込んできます。
現代の人々は真実を知りたいと考えていれば、いくらでも事実を検証して訂正することが可能な状況にあるはずです。
しかしいかに優れた検証記事であってもクリックされなければ、内容を伝えることはできません。
そのため、確証バイアスがフェイクニュースの訂正を妨げる要因となっているかどうかは、検証記事への「クリック行動」に集約して確認することができるのです。
そこで今回、名古屋大学の研究者たちは人々の「クリック行動」に着目し、確証バイアスがどう影響するかを調べることにしました。


























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