人工衛星を木材で作るメリットとは?
まず第一に挙げられるのが「地球環境に優しい衛星になる」ことです。
現在の人工衛星は主に、軽くて耐久性に優れたアルミニウム合金などの材料が使われています。
役目を終えた人工衛星はスペースデブリとして宇宙に留まらないよう、地球大気圏に突入させることになっています。
ところが研究者によると「アルミニウムは大気圏に突入する際に酸素と反応して酸化アルミニウムになり、小さな粒子を作り出す」という。
「これを計算すると、1μmのアルミニウム粒子は40年ぐらい大気圏内に滞留し、それが大量に蓄積すると、太陽光を反射し、冷却化など地球の気象変化が起きる可能性がある」のです。
しかし木材は水素と炭素と酸素からなるため、大気圏に突入しても水蒸気と二酸化炭素にしかなりません。
加えて、木材は電磁波を通すことができます。
従来のアルミニウム合金だと電磁波をシャットアウトするので、人工衛星を作る際は通信用アンテナを外に出して展開しなければなりません。
すると、アンテナを開閉するメカニズムが複雑になって失敗のリスクが高まるのです。
他方で、木材は電磁波を通すのでアンテナを外に出す必要がなく、衛星の内部に収納できます。
この他にも、木材はマイナス100℃からプラス100℃まで物性が変化せず、安定性や断熱性が非常に高いなどの利点もあります。
宇宙空間には水分や酸素、バクテリアが存在しないので、燃えることも腐ることもありません。
今回の試験を踏まえても、木材は過酷な宇宙環境で劣化せず、長期間にわたって使用できると考えられます。
チームは今後、木造人工衛星の打上げに向けて最終的な調整を進めていく予定です。
地球の木材産業が宇宙開発にまで拡大する日が近いかもしれません。