海洋深層水はイカの体重減少を抑制している
鈴木氏ら研究チームは、石川県能登町の小木漁協から購入した生きたスルメイカ(学名:Todarodes pacificus)を、海洋深層水グループと表層水グループに分け、同じ大きさの水槽(500Lの円形水槽)で36時間飼育しました。
それぞれのグループは同じ水温(15-16℃)で飼育され、その間、両方ともエサは与えられませんでした。
そして実験対象であるスルメイカの体重、血液、脳を採取し、それぞれの違いを分析しました。
その結果、表層水のスルメイカの体重が148.2gから137.9gに減少したのに対し、深層水のスルメイカの体重は、148.0gから144.3gに変化しただけでした。
深層水グループは表層水グループに比べて、体重があまり減少しなかったのです。
また血液や脳で発現している遺伝子を調べた結果、深層水はスルメイカのコレステロール値やミネラル代謝などに影響を与えることが分かりました。
さらに深層水で飼育すると体液を調整するホルモンの発現が変化し、これが体重の減少を抑制していると判明しました。
このことが科学的に証明されたのは世界で初めてです。
海洋深層水がイカの体に確かな変化を与えることから、「海洋深層水でイカを飼育すると身が痩せない」というのは、科学的に正しい情報だったと言えます。
この研究結果は、これまで難しかったスルメイカの畜養や活魚輸送など、スルメイカに関連した水産業に大きく貢献するはずです。
私たち消費者としては、生きたまま運ばれてきたスルメイカを、これまで以上に美味しく食べられるようになるかもしれません。
今後研究チームは、アオリイカなど他の種類のイカでも海洋深層水の効果を確認する予定です。