そもそも魚に首はあるのか?
「首を長くする」「首が回らない」「首をかしげる」のように、日本は「首」という一つの言葉を多彩な慣用句に使用しています。
首は頭部と身体をつなぐ重要な部分であり、その動作を通じて人間は多様な表現が可能となります。
慣用句が多いのも、人類には首を使った表現を行うことが得意だからだと言えるでしょう。
また首の柔軟さは、感覚器官が集中している頭部を旋回させることを可能にし、環境からの情報の取得に貢献しています。
この柔軟さを支えているのが、首の骨の連なりです。
これまでの研究により、哺乳類の首の骨は7個存在していることが知られており、この7個の可動性に富んだ連なりによって、首の柔軟性と安定性のバランスを保っています。
あの首が長いことで知られるキリンも、海に生息する巨大なクジラも、人類と同じ7個の首の骨で頭部を支えています。
(※ナマケモノ(8~9個)やジュゴン(6個)といった一部の例外があります。)
また鳥類の首の骨は11~25個とかなり多く、ニワトリなど14個、首が長いことで知られる白鳥は22~25個であることが知られています。
さらに首長竜などは70個の首の骨があったことが化石から判明しました。
一方、カエルなどの両生類では首の骨が1個しかないことがわかっています。
そのためカエルたちが別の方向を見たい時には、哺乳類や鳥類のように首を回すのではなく、体全体の向きを変える必要があります。
では魚の首の骨はどうなのでしょうか?
1匹のサンマやイワシなどを食べたことがあるひとならば、魚たちにも頭蓋骨があり、中央部には肋骨を伴った「胸椎」が走っているのをみたことがあるはずです。
しかし魚類の多くは、人間や鳥の首ように頭部と体を繋げる「細い部分」としての首は存在しません。
ナマズのように全身が柔軟な魚類も存在しますが、哺乳類や鳥類のように頭部だけをクルリと回転させることは困難です。
魚に首の骨はあるのか、あるとしたら何個なのか?
もし無いのならば、哺乳類や鳥類などの首の骨はどこから来たのでしょうか?
単なる首の骨でも、その起源の探索は脊椎動物という背骨を持つ動物の進化を紐解く上で非常に重要だと言えるでしょう。
そこで今回、埼玉大学の研究者たちは、魚に首の骨の謎について調べることにしました。