乳児期の男の子がおしゃべりなのは「生存率を高めるため」説
一般的に男の子は身体活動レベルが高く、これが生後1年目の発声の多さにも関係している、という考え方があります。
しかしこの説だけでは、2年目に発声の性差が逆転する理由を説明できません。
逆転後も男の子の身体活動レベルは高いままだからです。
そこでオーラー氏は、「乳児が自分の健康状態を表現し、生存率を高めるために発声している」という説を唱えています。
そして性差が生じる理由について次のように述べました。
「おそらく、男の子の方が女の子よりも生後1年間に死亡しやすいためではないか、と考えています。
最初の1年間で多くの男の子が死亡することを考えると、男の子は発声における強い選択圧(自然淘汰による進化を促す方向にかかる自然の圧力)を受けていた可能性があります」
また生後2年目からは死亡率が男女共に劇的に低下するため、「こうした圧力は男女共に低下する」と付け加えています。
つまり男の子が乳児期だけ女の子よりも「おしゃべり」なのは、死亡率の高い期間になるべく大人たちに注意していてもらうためだった、というのです。
もちろん、この説が証明されたわけではありません。
今回の結果を正確に説明するためには、今後も理解を深めるための研究が必要となるでしょう。
ただ、生後1年間に死亡率の高い男の子は、なるべくしゃべって大人の気を引き、異変が起きた際に素早く対処して貰う必要があったというのは興味深い推測です。
もし次に、赤ちゃんの「あー」とか「うー」といった発話を聞く機会があるなら、単に「かわいい」と感じるだけなく、生物的な意味についても考えてみてください。
それは赤ちゃんが乳児期を生き残るための「生命力に満ちた力強いシグナル」なのかもしれません。
研究チームは次の段階として、「赤ちゃんが発する音に対して、介護者(大人)がどのような反応をするか」という点を理解したいと考えています。