「音楽」と「数学」は双子の関係にある?
「音楽」と「数学」が互いに双子のような関係にあることはよく知られた事実です。
音はそもそも周波数(1秒間に発生する波の数)で表され、周波数が高いほど高音に、低いほど低音になるなど、数字と深く関わっています。
こうした音と数の関係に人類は大昔から気づいていました。
古代ギリシアの数学者であるピタゴラス(BC582〜BC496年)は、弦の長さの整数比から「音階」を発見したことでも有名です。
彼は数字と音の密接な関係性から「自然界のあらゆる構成物は数から生じるハルモニア(調和)で成り立っている」という名言を残しました。
つまり、音楽のハーモニーは数字の規則性から作られるというわけです。
また楽譜を見てみると、音符の長さは分数で表現されています。
音符の基本となる全音符を1として、その長さを半分にしたものが2分音符、4分したものが4分音符、8分したものが8分音符です。
この他にも音と数字に見出される共通点は数えきれないほど存在します。
音楽レッスンの前後における算数・数学のスコアを比較
これを関連するように、過去の研究では「音楽の得意な子供ほど算数も得意になる傾向が強い」ことが示されていました。
音楽と数学の類似性からすると直感的には納得できますが、一方で「音楽を学ぶことで本当に算数の成績が良くなるのか」は明らかにされていません。
そこで研究チームは、その詳細を探るべく、1975年から2022年の間に発表された同テーマに関する先行研究を学術データベースから収集して分析することにしました。
最終的に世界中の55の先行研究が集められ、対象データには幼稚園児から大学生にいたる約7万8000人が含まれていました。
これらの研究では、音楽学習の介入の前後で算数あるいは数学のスコアがどう変化したかが調べられています。
今回のメタ分析によると、数学スコアに影響する音楽介入には3つの種類がありました。
1つ目は、子供や学生たちが歌を歌ったり、音楽を聴いたりする「標準的な音楽レッスン」。
2つ目は、子供や学生たちが個人または楽隊、バンドの一員として楽器の演奏方法を学ぶ「器楽レッスン」。
3つ目は、算数や数学の授業に何らかの方法で音楽を取り込む「音楽と数学の統合レッスン」です。
そして、これらの介入に参加する前後で生徒が数学のテストを受け、その点数の変化を介入に参加しなかった若者と比較しています。