線虫は「静電気ジャンプ」でハチに飛び移っていた!
チームは線虫が自然界で拡散する際にも、この静電気ジャンプを利用していると考え、マルハナバチを使った実験を行いました。
マルハナバチを用いた理由は、彼らが空を飛ぶときに電荷を帯びたり、体表面の帯電を利用して植物の花粉をくっつけることが知られているためです。
実験では花粉をこすりつけて帯電させたマルハナバチをピンセットでつまみ、線虫に近づけてみました。
その結果、事前の予想通りに、線虫が静電気の引力を利用してハチの体に飛び移っていることがわかったのです。
また線虫は飛び移る前に体を垂直に立て、ハチと自分の間に働く表面エネルギーをできるだけ減らすことで、ハチにくっつきやすくしていました。
もし水平に寝そべったままだと、細長い体の全面に静電気の引力が働かなければなりませんが、体を立てておくと尻尾の先っちょだけで済みます。
要は「線」にかかるところを「点」にしていたのです。
さらなる驚きは1匹の線虫が最大100匹近くの線虫を持ち上げて、その集団ごと飛び移れたことでした。
帯電したマルハナバチを近づけた実験で、100匹近い線虫が集団でジャンプして飛び移る様子が観察されています。
以上の結果から「線虫は静電気の引力を利用して他の生物に飛び移ることができる」と結論しました。
これは「線虫がどうやってハチの体にヒッチハイクしているのか」という謎に答えるものです。
ある生物が他の生物と相互作用する際に、音や直接的な接触、フェロモンなどの匂いを使うことはよく知られていますが、「電気」を利用する例はほとんど報告されていません。
しかし線虫のような小さい生き物は帯電しやすいため、彼らサイズの世界では電気を利用した行動がありふれている可能性があります。
今後、小さな生物を調べる際は目に見えない電気に注目することで、新たな発見が期待できるかもしれません。