アノマロカリスは三葉虫をバリバリ食べられたのか?
アノマロカリスの化石は1800年代後半に、カンブリア紀の地層を保存するカナダの「バージェス頁岩(けつがん)」で初めて発見されました。
全体の容姿はエビに似ており、2つの複眼と顔の真下にある丸い口、前方に突き出した2本の付属肢が特徴です。
学名のアノマロカリス・カナデンシス(Anomalocaris canadensis)は、ラテン語で”カナダ産の奇妙なエビ”を意味します。
体長は約60センチに達しましたが、今日の水準からすれば大型犬くらいなので、それほど大きく感じないかもしれません。
しかし当時の海は体長10センチ以下が普通でしたから、60センチはとんでもなく巨大でした。
それゆえにカンブリア紀の頂点捕食者とされてきたのです。
古生物学者たちも「頻繁に見つかる破損した三葉虫の化石はアノマロカリスによる攻撃が原因だろう」と考えてきました。
その一方で、本研究主任のラッセル・ビックネル(Russell Bicknell)氏は以前からこの説に疑問を抱いていました。
「私には腑に落ちませんでした。三葉虫の外骨格はとても丈夫で、岩のように硬い成分でできています。
反対にアノマロカリスの体はほとんどが柔らかく、ふにゃふにゃしていたと考えられています」
また実際に、アノマロカリスが三葉虫をバリバリ捕食していたとする事実は学術的には正式に発表されていません。
加えて、口器に関する近年の研究では「硬い食べ物を処理する能力はなかった可能性が高い」とする結果も報告されています。
そこで今回の研究では、アノマロカリスの「2本の付属肢」が三葉虫のような硬い生物の狩りや捕食に使用できたかどうかを調べました。