「お口トラブル」は認知症と関連がある
認知症の発症には糖尿病やうつ病など、様々な要因が関与しています。しかし、すでに関与が明らかとなっている危険因子は、認知症症例の40%に過ぎません。
近年、歯の喪失や歯周病といった口腔内のバクテリア感染が、アルツハイマー病を含む認知症の新たなリスク要素として注目されています。これらの問題は世界的に非常に多くみられ、認知症の発症や進行との関連や影響を評価することが非常に重要な研究テーマとなっています。
アルツハイマー病の初期段階では、記憶と関連する脳の構造、特に海馬と嗅内皮質の著しい萎縮が見られます。海馬の萎縮はアルツハイマー病のリスク要因として指摘されており、先行研究では歯の数の減少や歯周病との関連性が示唆されています。
動物実験では歯の喪失や歯周病が海馬の神経変性を引き起こすことが報告されています。しかし、ヒトを対象とした研究では、歯数や歯周病と海馬の萎縮速度との間に明確な関連性が確認されていません。
脳の萎縮は、口腔内の炎症によって引き起こされる可能性があります。もし、歯周病が重度で炎症の程度がひどければ、海馬の形態に影響するかもしれません。
すなわち、歯の数と脳の形態変化との関連は歯周病の程度に依存するという関係が成り立つと考えられます。
そこで、東北大学の研究グループは、中高年後期のMRI健診参加者を対象に、歯数や歯周病と4年間の海馬の萎縮速度との関連を解析しました。
結果、軽度の歯周炎患者では歯の数が少ないほど左海馬の萎縮速度が速く、重度の歯周炎患者では歯の数が多いほど萎縮速度が速いことが明らかになったのです。