・他人に強く感情移入する人は、音楽を聞いたときの脳の活動が特殊であることが判明
・音楽を聞きながらMRIで脳活動を調査したところ、馴染みのある曲を聞いたとき「人と関わり合うことで反応する脳領域」が活発に
・音楽が世界や歴史の中でどのような機能を果たしているかの理解につながる
南メソジスト大学が行った研究で、感情移入が強い人は、音楽を処理する脳の活動部分が普通の人とは異なることが分かりました。感情移入が強い人は、馴染みのある曲によって脳の報酬システムや社会的な情報の処理を担っている部分が刺激されることが判明。報酬システムが働くことで、音楽を聞くことで多くの幸せな経験をすることができます。
http://dx.doi.org/10.3389/fnbeh.2018.00066
感情移入の強さに関わらず、人は聴覚や感情、感覚運動における処理は、脳の共通の場所で行われています。過去の調査によると、他人に強く感情移入する人は人口の約20%。彼らは非常に繊細で、感情的・社会的な刺激に強く反応するといわれていますが、普通の人と彼らの脳活動はどのように違うのでしょうか。
研究者は、20人の大学生に対して、音楽を聞いている途中の脳の様子をMRIで観察しました。流した音楽は学生にとって馴染みのある曲、または聞いたことのない曲、好きな曲、そして嫌いな曲です。
その後、よく他人の苦しみに共感するか、他人の立場になって想像を働かせるかなど、感情移入の仕方について一人ひとり尋ねました。
その結果、感情移入が強い人は馴染みのある曲を聞いたときに、脳の背側線条体や報酬システムが活発になっていることが分かりました。これは、精神的な活動や幸福感などのポジティブな感情が起こっていることを示します。
さらに、前頭前皮質や側頭頭頂接合部おいて非常に活発な動きを記録しました。前頭前皮質は社会的行動を担う部分で、側頭頭頂接合部は他人の言動やその意図を理解するための重要な部分です。
興味深いことに、被験者が聞いた曲への評価を行ったデータから、高い感情移入をもつ人は音楽の好みについて非常に情熱的で、聞き慣れない音楽でも強い好みを示しました。
今回の研究で活発になった脳の領域は、人が会話や他人のことを考えることでよく働きます。このことから、音楽を聞くことは人と会う疑似体験のようなものと考えられます。
研究者のザカリー・ウォールマーク氏は、「この研究結果は、音楽がどのように人と人をつなげているか科学的に説明する助けになります。これは、音楽が世界において、さらに言えば歴史の中で果たしている機能について、理解することにつながるでしょう」と述べました。
via: EurekAlert / translated & text by ヨッシー