温暖化でカモフラージュ行動が増える?
チームが地元ダイバーに聞き込み調査を行った結果、ヘラヤガラのカモフラージュ行動は、サンゴ礁や岩礁が劣化していて小さく、海底の見晴らしがよい場所で目撃件数が増えていたのです。
考えてみれば、これは理にかなっています。
サンゴや岩礁が豊かな場所では、身を隠す場所がたくさんありますが、見晴らしのいい環境では、ヘラヤガラの隠れる場所が無くなるので、獲物に自然と気づかれやすくなるでしょう。
そこで彼らは他の魚の背後に隠れる戦略を取っているようなのです。
こうした点も私たちの鬼ごっこと同じかもしれません。
遊具や障害物の多いスペースではその陰に身を隠せますが、見晴らしのいい運動場では、他の人の背後に隠れながら忍び寄るのが有効です。
また研究者らは、温暖化や環境汚染により世界中のサンゴ礁が劣化している現状を考えると、ヘラヤガラのカモフラージュ行動は増加するかもしれないと指摘しました。
研究主任のジェームズ・ハーバート=リード(James Herbert-Read)氏は「ヘラヤガラが身を隠すのに利用するサンゴ礁や岩礁などの構造物が少なるにつれて、こうした行動は今後より一般的にものとなるでしょう」と述べています。
ヘラヤガラに狙われる側からすると、無害で安全だと思っていた魚の後ろから突然、天敵が現れるのは絶望でしかありません。
その気持ちは鬼ごっこの経験者なら身に染みて分かるはずです。