メビウスの輪を作るにはある程度の長さが必要
メビウスの輪は帯状の紙を一回転させて、端同士をセロハンテープでくっつけることで作成できます。
この輪の上をアリが歩くと、表側と裏側が入れ替わるようにして、永遠に循環を繰り返します。
通常の輪では歩き始める場所を決めた時点でリング表面の表側と裏側のどちらか一方の面の上しか進めませんが、メビウスの輪では表と裏の両方を進める点で大きく違います。
そのため録画テープやインクリボンなど表も裏も使えたほうが得な構造では、メビウスの輪の構造がよく取り入れられています。
またベルトコンベアをメビウスの輪の形にすると接触面が2倍になるため摩耗しにくく長持ちするという利点があります。
しかしメビウスの輪の実用が進む一方で、メビウスの輪そのものの特性、特に作るのに必要な最低限のアスペクト比(縦横比)は不明となっていました。
前述のようにメビウスの輪は小学生にも簡単に作ることができますが、材料として渡される帯の形状によっては、かなりの困難が生じます。
たとえばアスペクト比1の正方形の折り紙でメビウスの輪を作ろうとしても、紙同士がぐちゃぐちゃに接してしまって(帯が帯に食い込んで)、綺麗なループ状になってくれません。
「綺麗なメビウスの輪を作るのに必要な最低限のアスペクト比はどれくらいか?」
この質問は単純に思えますが、実はメビウスの輪が最初に発見された1858年から現在に至るまで、誰も答えを数学的に証明することはできませんでした。