神様の存在を意識しても自己中心的な行動が抑制される
自己中心的な行動を抑制するのは「お化け」だけではありません。
神様の存在も自己中心的な行動を抑制し、利他的行動を促進するようです。
2007年に「Psychological Science」に投稿された、ブリティッシュ・コロンビア大学のアジム・シャリフ氏(Azim Shariff)ら研究チームは、神様の存在を意識することで心理・行動面にどう影響するかを検討しました。
実験では、参加者に①神様に関連する10個の単語(spirit、divine、Godなど)を使って文章を作る人と、②何もしない人の2つのグループに分けました。
この活性化させたい概念に近い単語を用いて文章を参加者に作成させる手法は認知心理学でよく用いられます。
結果、神様の存在を意識した人は、しなかった人と比較して、約2.3倍多くのお金を他者に分配しようとする傾向がありました。
これらの結果は、超自然的な存在を意識することが利己的な行動を抑制する可能性を示唆しています。
日本人はよく特定の宗教を持たないと言われますが、代わりに日常的な観念として物に魂が宿るとか、あらゆる場所に八百万の神が住んでいるというような道徳観を持つ人が多く存在します。
これが日本ではお財布を落としてもちゃんと交番に届ける人が多いなどの理由に繋がるのかもしれません。
研究チームは「人間の目が描かれた壁紙やカメラの存在が利他的行動を促進することが分かっている。これは超常現象的な存在であっても生じるようだ。神様や幽霊などの超常的な観察者が存在する場合にも、自己中心的な行動が抑制されると考えられる。」と述べています。
また神様の存在を意識することによる自己中心的な行動の抑制に関しては、認知能力が低下するデメリットは確認されませんでした。
そのため認知能力の低下が懸念される教育などの場面では、幽霊よりも神的存在を意識させることで不正行為を防止するのが有効かもしれません。