誰かに見られていると自己中心的な行動が抑制される
他者の目があると、私たちは自己中心的な行動を控え、他者に利益を分配するなどの利他的行動が促進されます。
促進されるのは他者への利益の分配にとどまりません。ほかにも他者への共感や社会的規範を守る確率も高くなります。
利他的な行動を行う理由は、社会が相互依存の関係で成り立っており、他者の支援や協力が自己の利益にもつながることがあるからなどさまざまな説が提唱されています。
実際に人間がその場にいなくても、人間の目があるポスターや監視カメラであっても、この現象は生じます。
そこで研究チームは人間や監視カメラではなく、お化けが自分自身を見ていると感じさせる状況が、心理・行動面にどのような影響を与えるかを検討しました。
実験に参加したのは大学生127名で、空間認識能力を測定する課題を受けてもらいました。
この課題のなかで優秀な成績を収めた場合には、参加者は高額な報酬を獲得できます。
課題を受ける前に、参加者は以下の3つのグループに分けられました。
①統制グループ:何も実験者から伝えられない
②お化けグループ:ポール・ケロッグ(架空の大学生)が実験の考案者であり、もう既に亡くなっていること、そして実験室に彼のお化けが出ることを知る
③故人グループ:実験の考案者はポール・ケロッグ(架空の大学生)であり、もう既に亡くなっていることを知る
そして以下の注意書きを読んでもらいました。
「この実験課題は新しく考案されたものです。ときどきプログラムが誤作動を起こし、回答する前に「正解」の文字がPC上に表示される場合があります。もし誤作動が生じた場合には、スペース・キーを押してから、問題に回答してください。スペース・キーを押すと、誤って表示された「回答」の文字が消えます。プログラムの誤作動の修正にご協力をよろしくお願いします。」
注意書きには、このように書いていますが、PCの画面上に誤作動を修正せず、次に進むと回答することなく正解することができます。
つまり、ズルをすれば楽をして正答数を増やすことができたのです。
さてお化けの存在はこのとき、ズルをして得点を稼ごうという自己中心的な行動にどのような影響を与えるのでしょうか。