Zoomの背景で「相手への印象」はどう変わる?
相手に与える印象は、円滑なコミュニケーションを進める上でとても重要です。
特に初対面の人に会った場合、私たちは最初の数秒内に相手の信頼度や能力、好感度、攻撃性、魅力などを推測することが分かっています。
先研研究では、こうした印象がプライベートや仕事上の付き合い、恋愛相手の選択、刑事裁判の判決など、あらゆる社会的判断に影響することが示されているのです。
その一方で、2019年12月に始まったコロナパンデミックを境に、ビデオ通話やZoom会議の機会が大幅に増加しました。
調べによると、2019年後半から2020年4月にかけて、世界でのZoomの利用者数は1000万人から3億人に跳ね上がったといいます。
それにより、コミュニケーション相手への印象がスマホやPC画面を通したデジタル空間上で発生するようになりました。
そこで考慮しなければならないのが、画面上の背景画像についてです。
Zoomを使ったビデオチャットでは、ユーザーが背景にボカシを入れたり、バーチャルの風景画像に差し替えたりと、自由にカスタマイズすることができます。
それにより相手に与える印象が大きく変わると予測されますが、これまでその心理的作用を調べた研究はほとんどありませんでした。
観葉植物と本棚がベスト!男性にはハンデも
そこで研究チームは、イギリス在住の一般参加者167人(女性115人、男性50人、ノンバイナリー2人:年齢19〜68歳)に協力してもらい、テレビ会議中に撮影されたように見える他者の静止画像について評価してもらいました。
それぞれの背景画像には、普通の生活空間・ボカシを入れた生活空間・観葉植物・本棚・何もない白壁・氷山の上に寝そべるセイウチ(イレギュラーな背景)を用意します。
ここに男女の顔をランダムに組み合わせますが、このとき、表情は笑顔か中立的な顔のいずれかに設定しました。
これらの画像に対し、参加者は「どれだけ有能に見えるか、また信頼度が高いか」について1〜7段階で評価します。
その結果、参加者はZoomの背景が観葉植物と本棚に設定されたとき、相手に対する有能さと信頼度を最も高く評価することが分かったのです。
対照的に、背景が生活空間やボカシを入れた背景、何もない白壁のときには、有能さと信頼度の評価が有意に低下することが示されました。
また事前の予想通り、セイウチの斬新すぎる背景も参加者による評価を低下させています。
一方で、参加者は顔の表情が笑顔だった場合、背景画像が同じときと比べて、信頼度が高いと評価する傾向にありました。
加えて、女性の顔は背景や表情に関わらず、男性に比べて全体的な評価が高いことも判明しています。
さらに女性の場合、背景が生活空間だったとしても、観葉植物や本棚のときとほぼ変わらない高い評価を得ていました。
このことから、背景を生活空間にして有能さや信頼度の評価が下がるのは、主に男性の顔によって引き起こされる特有の心理作用であることが示唆されています。
この性差は非常に興味深いものがありますが、今回の結果から言えることは背景を観葉植物や本棚のあるものを選択したり、笑顔でビデオ通話に臨むことが仕事の上では好ましいということでしょう。