内気さは精神疾患のリスクを高める主因
「内気さ(Shyness)」は、対人関係において、不安や居心地の悪さ、神経質なネガティブ感情を示す性格特性の一つです。
また内気な人ほど自意識が強く、そのせいで余計なことをあれこれと考えてしまい、相手との会話が続かなくなります。
これは「自己沈黙(self-silencing)」として知られる行動です。
自己沈黙とは、親密な相手との関係を失ったり、他者との対立や葛藤を避けるために自分の意見や感情を胸の内に抑え込んで、言葉にしないことを指します。
ここ数十年の心理研究により、10代の青少年期における「内気さ」は、うつ病や不安症状、強い孤独感といった精神疾患のリスクを高める最も大きな原因の一つであることが明らかになってきました。
またこれまでの研究の多くは、多人数の友人グループから仲間外れにされたり、拒絶された場合に起因する「内気さ」と「精神疾患」の関連性についても着目しており調査対象にしてきました。
ただ、こうした事実とは対照的に、内気な者同士の友情が精神疾患に与える影響については調べられていませんでした。
そこで研究チームは今回、10代の青少年を対象に「親友が内気であることが精神疾患にどのような影響を及ぼすか」を検証することにしたのです。
親友も内気だと精神疾患のリスク増!
調査では、地元の学校から参加してもらった89組の同性の親友ペア(計178人、女性54%・男性46%、平均年齢14歳)を対象に、それぞれの内気さ・自己沈黙・孤独感・うつ病・不安症状の度合いをアンケート調査で測定しています。
データ分析の結果、内気さのスコアが高い参加者ほど、自己沈黙の傾向が強く、他の参加者に比べて孤独感を感じており、うつ病や不安症状のリスクが高いことが判明しました。
さらに調査データは、自分の意見や感情を抑制する「自己沈黙」が、本人の感じる孤独感を増大させ、うつ病や不安症状のリスクを高めていることを示していたのです。
このことから、内気さは「自己沈黙」を媒介にすることで精神疾患を引き起こしている可能性があるとチームは指摘しています。
しかし最も注目すべき点は、内気な参加者の親友も内気さのスコアが高かった場合、両者のうつ病や不安症状のリスクが有意に高まっていることでした。
これと比較した場合、本人の内気さのスコアが高くても、親友が明るく社交的であれば、精神疾患のリスクも低くなっていたようです。
今回の研究は、親友の内気さと精神疾患との相関関係を指摘するものに留まっており、どういうメカニズムで精神疾患のリスクを高めるのかという因果関係については明らかにされていません。
とはいえこれは納得のいく結果かもしれません。
もしあなた自身が内気でおとなしい性格だったとしても、親友が底抜けに明るい人であれば、相手が積極的にコミュニケーションを促し、あなたの悩みや意見を引き出してくれるでしょう。
口にして話すことだけでも、うちに溜めたストレスは緩和されます。
反対に、あなたと同じく親友も内気な性格だった場合、お互いに自己沈黙をすることで意見や感情を胸の内に秘めてしまい、心理的にネガティブな影響を与えあってしまうと予想されます。
また後ろ向きな発言を交換し合うことで、うつ病や不安症状を助長してしまうのかもしれません。
チームは今度の課題として、10代の青少年だけでなく、その他の年齢層でも同様の調査を行っていきたいと述べています。
ちなみにですが、内気であること自体は決して悪いことではありません。
これまでの研究で、内気な人は「思考力や集中力が高い」「人の話をよく聞いて冷静な判断ができる」「客観的な視点による洞察力に優れている」など、数多くの長所を持つことが分かっています。
しかし本研究の指摘を踏まえると、そういう人が周囲の友人関係まで内気な人で固めてしまうのは良くないかもしれません。