かゆみを軽減するための装置
かゆみを測定する機器について紹介しましたが、今度はかゆみを抑えるための装置を紹介します。
ローラーが熱さと冷たさを交互に与える
かゆみを科学的にアプローチする手法として、かゆみ軽減装置というものがあります。
ある研究ではかゆみのある患部に温度変化を与えると、かゆみが軽減されると報告されています。(G ヨシポビッチ)。
これは痛みを伴うほどの有害な熱の変化ほど効果が高いとされていますが、当然火傷してしまうような熱の変化は治療としては役に立ちません。
そこで、この研究報告を元に皮膚にとって安全な温度を保ちつつ、かゆみを抑える適切な温度変化を与えるローラー型の装置が考案されています。
私たちは熱いものに触れたり、冷たいものに触れた時、すぐに手を引っ込めれば皮膚を損傷することなく耐えられる場合があります。
この装置はそうした原理を利用しており、ローラーの片側半周が冷却ゾーン、もう半周が加熱ゾーンに設定し、ローラーを素早く回転させることで皮膚に冷温刺激を安全に与えられます。
Credit:電通大
また、ローラーの温度は加熱ゾーンは最大43℃、冷却ゾーンは最小15℃までに制限されており、30分以内の使用ならば安全に利用できるといいます。
この装置を治験者が試したところ、かゆみの抑制効果を発揮することが示唆されました。
サーマルグリル錯覚によるかゆみ軽減装置
この装置は、温かいものと冷たいものを同時にふれると、本当は熱くないにもかかわらず「熱さ」や「痛み」を感じるサーマルグリル錯覚を活用したものです。
なぜサーマルグリル錯覚が起こるのかは明らかにはなっていません。
ただ、サーマルグリル錯覚を活用すれば体に悪影響を及ぼすことなく、「痛い」という感覚を与えることが可能です。
先程も解説しましたが、かゆみを生じる場所に痛みを与えると、神経回路の関係でかゆみは鎮まります。
このデバイスは、熱さと冷たさを同時に与えることにより、皮膚にダメージを与えることなくサーマルグリル錯覚による「痛み」を与えます。
この「皮膚を傷つけない痛み」により炎症や傷を悪化させずに、かゆみを抑えることが可能です。
2023年6月に行われた、商品開発に向けてのクラウドファウンディングは資金が集まらずに終了しましたが、2024年度中には一般販売を開始する予定です。
薬品以外の力でかゆみに対処する
かゆみの原因はさまざまであり、根本治療が必要な場合も多くあります。
そのため、皮膚科医や内科医などの専門医にかかり適切な薬を処方してもらうのが第一ではありますが、今回紹介したように引っ掻く以外の刺激によってかゆみ対策を行うことも可能です。
近い将来、今回紹介したデバイスが「我慢できないかゆみを何とか抑えたいとき」の助けになるかもしれません。