自然火災に必要な「3つの条件」
まずもって、自然下で火災が起こるには3つの条件がそろっていなければなりません。
それは「燃えるもの」「酸素」「熱源」の3つです。
火とは科学的に説明すると、燃えるものと酸素が高い温度で結びつくことで生じる発熱反応を指します。
例えば、マッチは棒の先端の頭薬(燃える物)をマッチ箱にすばやく擦りつける摩擦熱(熱源)によって、酸素と反応し火がつきますね。
この3つの条件のうち、熱源は地球以外でも多くの惑星に確認できます。当然地球にも初期の頃から備わっていました。
最も一般的なのは「落雷」であり、これは今でも山火事の直接的な原因となっています。
他にも乾燥下での摩擦や落石がぶつかる際の火花、稀ですが隕石の落下など、熱源は豊富に存在していました。
一方で、燃えるものと豊富な酸素については話が別です。これは他惑星でもなかなか見つけることが難しく、初期の地球にも存在していませんでした。
これらはいつ、どのように地球に誕生したのでしょうか?
地球に「酸素」はどうやって誕生した?
広く認められているように、地球最初の生命は約35億年前にあらわれたと考えられています。
それらの生命体は酸素を必要としない嫌気性であり、二酸化炭素を主成分とする大気中で暮らしていました。
しかし、それから長い年月を経た約24億年前に光合成をして酸素を生み出す「藍藻(シアノバクテリア)」が誕生します。
彼らが作り出した大量の酸素によって地球の酸素濃度は上昇し、そのおかげで大気中にオゾン層が形成され、太陽からの有害な紫外線をシャットアウトできるようになりました。
この約24〜20億年前にかけて起こった酸素濃度の急上昇を「大酸化イベント(Great Oxidation Event:GOE)」と呼びます。
ここで初めて大気中に酸素が蓄積され始めましたが、それでも自然火災が起こるほどの濃度には達しませんでした。
大酸化イベントにより酸素は大気中の数%を占めるまでになったものの、英エクセター大学(University of Exeter)の先行研究で、大気中の酸素濃度が16%以下であれば、たとえ火がついても火は燃え広がらないことが判明しているのです。
(ちなみに現在の地球の酸素濃度は20.9%ですが、23%以上になると火災は急速に燃え広がり、自然環境にとって壊滅的な規模になるという)
要するに、大酸化イベント後でもまだ自然火災は起こりえなかったわけですが、大気の酸素濃度が上がったことで、より複雑な生命進化の舞台が整いました。
それが燃える物である「植物」の繁栄だったのです。