長年のナゾ〜「肩」はどこからきたのか?
人間の肩は、実は進化的に「どこからきたのか」が、よくわかっていなかった体の部位です。
ここで言う「肩」とは、正確には肩の骨格と筋肉の集合体である「肩帯=けんたい」のことです。肩帯がどのように進化してきたのかは、長い間、解剖学的なナゾとされてきました。
肩の起源に関する主な説は2つあります。
ひとつは、「ギルアーチ仮説(Gill-Arch Hypothesis)」です。これは、魚のヒレが鰓弓(さいきゅう[ギルアーチ]、エラを支える骨の構造)から進化し、これが肩を形成したとする仮説です。
もうひとつが、「フィンフォールド理論(Fin-Fold Theory)」で、これは魚のヒレが体側の筋肉の線(フィンフォールド)から進化したとするものです。
これらの理論は19世紀後半に提唱され、長年多くの支持を得てきましたが、ギルアーチ仮説は化石証拠が限られているため確定的ではなく、フィンフォールド理論は肩帯の進化に関しては不完全な説明とされてきました。
ここで登場するのが、今回ご紹介する研究を行ったインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)のブラゾウ博士(Dr. Brazeau)らの研究チームです。
彼らは、古代魚の化石を詳しく調べ、人間の肩の進化は魚の鰓を支える骨の構造「鰓弓」から始まったという新たな説を提唱しました。