なぜチア・リーダー効果は生じるのか
「チア・リーダー効果」の仮説の一つとして階層的符号化仮説があります。
この仮説は、複数の顔を同時に見ると、全体の顔の平均を自動的に計算し、個々の魅力度評価がその平均に引き寄せられ高くなるのではないかとする考えです。
平均的な外見というと魅力的でないように思われるかもしれません。
しかし平均的な顔は、顔のパーツが左右対称でないなどの魅力度の低下を招くとされる要素が緩和され、魅力度が高く評価される傾向があることが分かっています。
それゆえ、個人の顔の魅力が低くても高くても、単独の場合より集団で写ってる場合の方が、より魅力的であるように見えるのです。
「チア・リーダー効果」が生じるのは顔だけではありません。
2021年に「Quarterly journal of experimental psychology」に投稿された、フリンダース(Flinders)大学のジャン・シェイ氏(Jean Hsieh)らの研究チームは、顔の「チア・リーダー効果」の再現性を調べるとともに、身体でも同様の現象が生じるかを調べています。
実験には、大学生52名が参加しました。
参加者は他の顔(あるいは身体)と同時で提示される条件と単独で提示されるパターンでの魅力度を評価してもらっています。
実験の結果、顔と身体は単独で写っている場合と比較して、他の顔(あるいは身体)と一緒に写っている場合の方が魅力度が高くなる傾向が確認されました。そして顔よりも身体の方がチアリーダー効果の大きさが大きいことも分かっています。
身体は他の人と一緒にいるとき魅力的に見えやすくなるようです。
またこの研究では、写真を見ながらより、時間をおいて記憶を頼りに魅力を評価してもらった場合の方が「チア・リーダー効果」が強く生じたと報告しています。
この結果は、顔の知覚段階ではなく、記憶段階のバイアスによって「チア・リーダー効果」が生じる可能性を示唆しています。
つまり「チア・リーダー効果」は、大勢の方が魅力的にみえるというより、後から思い返したときにグループでいた人を魅力的だったと感じる記憶のバイアスの可能性があるのです。
さらに近年では、人間以外の家や猫でも「チア・リーダー効果」が生じることが分かってきました。
この結果を考慮すると、オンラインショッピングサイトや商品のカタログでは、商品を個別で顧客に見せるのではなく、複数の商品をまとめてパッケージとして見せることで、商品の魅力度が高く評価される可能性が考えられます。
またプロフィール写真を自分一人が写っている写真にするのではなく、複数人で写っている写真にすることで周りの人から好印象を抱かれるかもしれません。
誰かに自分を魅力的に見て欲しいときや、写真の対象をより魅力的に見せたいときこの効果を上手く使うといいかもしれません。