2つの子宮による妊娠
米国に住むケルシー・ハッチャーさんは、32歳で3人の子供の母親です。
彼女は17歳の時に自分が「重複子宮」という珍しい体の状態を持っていることを知りました。
通常、女性の体には一つのハート型をした子宮がありますが、「重複子宮」では上の図のように、通常の子宮が左右に分かれたような形をしています。
それぞれの子宮は、左右の卵巣に接続されており、単独での妊娠が可能となっています。
また、重複子宮を持つ女性の中には、非常に珍しいケースとして、膣が2つある人もいます。
(※その場合、それぞれの膣は異なる子宮に繋がっているのです)
重複子宮は非常に珍しく、1000人の女性のうち3人(0.3%)程度しか存在しないと考えられています。
最近ハッチャーさんは再び妊娠していることが判明したため、超音波検査のために病院に向かいました。
すると驚いたことに、ハッチャーさんの2つの子宮のそれぞれに、女の子の胎児が存在することが判明しました。
彼女はインスタグラムに超音波検査の映像を乗せると共に「私たちはびっくりしました!最初の超音波検査の間、私たちはたくさん笑いました」と書き込んで投稿しました。
重複子宮を持つ女性は妊娠の合併症に直面することが多いですが、ハッチャーさんのこれまでの子供 3 人は全員、片方の子宮のみを使った正期産で健康に生まれました。
両方の子宮での妊娠は非常にまれで、ある医師はハッチャーさんは確率は5000万分の1だと言いました。
また別の医師は、それぞれの子宮で同時に妊娠する確率は約「100万分の1」と述べました。
医師によって算出方法が違うため数字にバラつきがあるようですが、とにかく珍しいケースなのは確かなようです。
実際、これまでに完全に別々の子宮で妊娠したケースは他に2件しか報告されていません。
(※最新の報告は2019年であり、バングラデシュにおいて20歳の女性アリファ・スルタナさん健康な双子を出産したことが報告されています)
ハッチャーさんの珍しい妊娠について、医師たちはその仕組みを次のように説明しています。
彼女の体には2つの子宮があり、それぞれの卵管から別々の卵子が降りてきました。
これらの卵子はそれぞれ異なる精子によって受精し、それぞれの子宮に着床しました。
つまり、ハッチャーさんが妊娠しているのは、一卵性双生児(同じ卵子と精子から生まれる双子)ではなく、二卵性双生児(異なる卵子と精子から生まれる双子)に近い状態となっているのです。
現在、彼女の2人の胎児は妊娠約34週目にあり、出産予定日は12月25日のクリスマスです。
ハッチャーさんは自然分娩を希望していますが、2つの子宮があるため、陣痛のタイミングが異なる可能性があります。
これは、片方の子宮で赤ちゃんが生まれた後、もう一方の子宮で赤ちゃんが生まれるまでに時間差があることを意味します。
実際に、2019年に報告されたケースでは、一方の子宮で生まれた赤ちゃんと他方の子宮で生まれた赤ちゃんの間に26日間の時間差がありました。
そのため、ハッチャーさんの場合も、陣痛の間隔が数時間から数日にわたって離れる可能性があります。
医師たちは、「両方の子宮に赤ちゃんがいる場合の管理方法を完全に理解している専門家はほとんどいない」と述べており、万が一の状況に備えて、帝王切開の準備も検討されています。
ケルシー・ハッチャーさんへのインタビューから、彼女の現在の妊娠に関するいくつかの興味深い事実が明らかになりました。
まず、彼女は今回の妊娠で以前の3回の妊娠よりも初期段階での疲労感が強かったことを感じています。
一般的に、妊娠は女性の体に多くの変化をもたらします。
これにはホルモンバランス、生理機能、さらには脳の構造にまで及ぶ変化が含まれます。
ハッチャーさんの場合、2つの子宮が同時に妊娠しているため、これらの変化が通常よりも激しく、それが疲労感の原因となっている可能性があります。
また、彼女のお腹は現在大きくなっており、その中央部には溝ができています。
これは、左右の子宮がそれぞれ独立して膨らんでいるために起こる現象です。
さらに、妊娠初期を過ぎた現在、ハッチャーさんは時々、お腹の左右で赤ちゃんたちの動きを異なる形で感じていると報告しています。
これらの報告は、重複子宮を持つ女性の妊娠がどのようなものであるか、そしてそれがどのように通常とは異なる体験であるかを知る貴重な情報と言えるでしょう。