6割は正露丸の鎮痛効果を経験していた
チームは今回、2015年4月4日〜2023年6月13日の間にSNSに投稿された「胃アニサキス症に対する正露丸の効果」に関する一般人の報告を集めて、分析しました。
記述の曖昧な数例を除くと、最終的に56件の報告が確認されています。
そして各々の内容を分析した結果、33件(59%)が「効果あり」、13件(23%)が「多少効果あり」、10件(18%)が「効果なし」と報告していることが判明しました。
「効果あり」と報告した人の症例では、次のように報告されています。
「刺身を食べた後、深夜に強烈な胃痛が周期的に襲ってきたが、深夜だったため、救急車を呼ぶのをためらった。
その最中、”アニサキスに正露丸が有効”という情報を得て正露丸を飲んだところ、ものの2〜3分で痛みが完全に消失した」
また別の報告では、
「カツオの刺身を食べた後、真夜中に強烈な胃痛に襲われたが、正露丸を飲むと、翌日病院に行くまでには痛みがほとんど消えていた。
病院で検査した結果、動きの止まったアニサキスが見つかり、まったく動いていないので簡単に除去できた」
と報告されています。
この他にも、多くの人々が正露丸の鎮痛効果を実感していることが分かりました。
また「多少効果あり」と報告した人では「正露丸の服用で痛みの周期が遅れ、ある程度の鎮痛効果が得られた」あるいは「胃痛をおよそ3分の1くらいまで和らげることができた」と述べられています。
一方で「効果なし」と報告した人では「正露丸を飲んでも症状はまったく改善しなかった」と述べられていました。
胃アニサキス症への正露丸の効果にムラがあるのはなぜか?
以上の調査から、過半数以上の人々が正露丸の鎮痛効果を経験していることが分かりましたが、反面、2割近くには鎮痛効果が出なかったことが示されています。
これについて研究者らは次の2つの理由を挙げました。
1つは胃の中の正露丸液がアニサキスを殺すのに十分な濃度に達していなかったことです。
例えば、正露丸が胃の中で完全に溶けきれなかったり、大量の水と一緒に飲んだ場合は、アニサキスの致死濃度に達しない可能性があるといいます。
もう1つはアニサキスが胃壁に深く刺さりすぎていることです。
最初に述べたように、アニサキスは胃や腸の壁に頭を突き刺して暴れ回りますが、あまりに深く突き刺さっていると正露丸液に浸り切らないので、死には至らなかったと考えられます。
それでもチームは今回の結果を受けて、大抵の場合、正露丸は胃アニサキス症の症状緩和のための応急処置として有効だろうと指摘しました。
チームは次のステップとして、より有効に効果が得られる正露丸の服用量や方法などを確立したいと話しています。
正露丸はあくまでも緊急用の処置であり、痛みがひどいからといって過剰に服用するのは控えましょう。
また症状が出た場合は、すみやかに病院に行って診察してもらうことをお勧めします。