日本では「医師の処方箋」が必要
緊急避妊薬(アフターピル)とは、望まない性行為や避妊に失敗した際に、女性が服用することで妊娠を防ぐ薬です。
現在、日本で認可されている緊急避妊薬は「ノルレボ錠1.5mg」「レボノルゲストレル錠1.5mg」の2種類で、主に産婦人科や婦人科を受診して処方してもらいます。
通販や薬局のみでの販売はなく、処方には必ず医師による対面かオンラインでの診察が必要です。
海外サイトで販売されている場合もありますが、これらは安全性が保証されておらず、何らかのトラブルが生じても公的な補償が受けられません。
処方可能な全国の医療機関の一覧については、こちらの厚生労働省のページに記載されています。
緊急避妊薬の仕組みとは?副作用はある?
緊急避妊薬の主な働きは、排卵を遅らせる作用により妊娠の成立を防ぐことです。
具体的には、薬剤に含まれる黄体ホルモン(プロゲステロン:女性ホルモンの一種)が排卵を抑制し、受精卵を作らせないように働きます。
また子宮頸管粘液(しきゅうけいかんねんえき)という子宮口の粘液の粘度を増加させて精子の運動性を低下させ子宮内への侵入を防ぎます。
加えて、子宮内膜の増殖を防止して体温の上昇を防ぐ作用があるため、たとえ受精卵になったとしても着床を防いで妊娠を防止します。
こうした緊急避妊薬は性行為から早く服用するほど効果が高まります。
過去の調査によると緊急避妊薬による妊娠阻止率は、性行為から24時間以内の服用で95%、48時間以内で85%、72時間以内で58%となっています。
避妊の成功率を上げるためにも、できるだけ早い服用が大切です。
グラフ中の白で示された「ヤツペ(Yuzpe)法群」とは、レボノルゲストレルが承認される2011年以前に一般的であった緊急避妊法のことで中用量ピルを2錠を服用し、その12時間後にさらに2錠服用するというものです。
これは現在の緊急避妊薬と比べて効果が劣り、副作用も出やすかった方法です。
青で示された「LNG群」が、日本でも認可されている安全で効果の高いとされる「レボノルゲストレル」を服用した場合です。
ただ安全とは言っても、レボノルゲストレルでもまったく副作用の心配がないとは言えません。
上述した通り、避妊薬は黄体ホルモンという女性ホルモンが含まれており、これが身体に働きかけることで妊娠を防いでいます。
レボノルゲストレルは女性ホルモンの量が少ない低用量ピルに分類されますが、緊急で妊娠を回避するために通常のピルよりは黄体ホルモンが多いため体内のホルモンバランスが崩れ、頭痛・吐き気・倦怠感・悪心・嘔吐・腹痛といった症状が出るケースがあります。
これらの症状の多くは数時間〜1日で自然に治まるとされています。
緊急避妊薬の効果は服用後2〜3時間で出始めますが、もし薬を飲んで2時間以内に吐いてしまうと、成分が吸収されずに避妊効果が得られない可能性があります。
ただそのような場合は、もう一度服用するのではなく、医療機関を受診するよう勧められています。
では、今回の「医師の処方箋なしでの販売」という取り組みに関し、懸念すべき点はあるのでしょうか?